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欧州情勢・西洋事情

2802とはずがたり:2018/10/16(火) 20:12:40
>>2801
戦後の欧州政治を担ってきた二大政党のうち、保守系は下り坂とはいえ、いまなお3割を超える支持を集める党が少なくない。なぜ社民勢力だけが振るわないのか。

アカデミズムの世界には、さまざまな仮説がある。08年に始まった米リーマン・ショックと、それに続く債務危機でEU各国は財政再建に動いた。金看板だった福祉政策に使うカネがなくなり、有権者が離反した。

欧州統合という域内グローバル化で価値観の多様化や雇用の規制緩和が進み、票田である労働組合の加入率が下がった。長い伝統が「古くさい」というイメージにつながり、新鮮さを求める有権者が環境政党などに流出した。そのうえリベラル化し、左派寄りになった保守系政党にも票を奪われた。

だが最大の敗因は、目指すべき方向を見失い政策が定まらないことだろう。例えばオーストリア社会民主党。当初は「寛容な難民政策」を掲げていたが、反移民機運が盛り上がると社会の説得に回るのではなく、沈黙する道を選んだ。

ドイツ社民党は「所得の再配分」をうたいながら何の手も講じない。メルケル首相の与党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との大連立で財務相ポストを保守の重鎮ショイブレ氏から奪っただけで満足し、路線変更はなかった。

党勢が衰えるなか、執行部はリスクを取らずに手堅く党を運営しようとする。「思い切った政策を打ち出して党が分裂するのを恐れている」とドイツ社民党の地方幹部は明かす。つまり組織防衛と私利私欲。社会改革が党是だったのにいつのまにか既得権益を守ることに明け暮れ、ポストに群がる。このままでは有権者はますます失望し、支持率がさらに下がるという悪循環に陥る。

中道左派は多くの国民が共鳴する理想を掲げた場合だけ政権をとることができる――。その定石を忘れたかのようだ。保守系政党は「現状維持」でもいいが、イデオロギーから出発した社民勢力は強力な目標がないと前に進まない。福祉国家、東西和平、構造改革。欧州を変えたスローガンが昔はあったが、いまは見当たらない。

「欧州統合を掲げるしかない」との声が広がる。欧州の先行きが危ういからこそ「統合」にこだわるべきだ、というわけだ。フランスでは社会党政権の閣僚だったマクロン大統領が新興政党「共和国前進」を立ち上げ、親欧派をうたう。これがモデルケースになるかもしれない。もともと左派政党は国際連携を重んじるという素地もある。

改革精神で他の政党に後れをとっているようでは未来はひらけない。19年5月の欧州議会選が迫る。まずは自己改革。目が覚めなければ惨敗だろう。すなわち社会民主主義の終わりの始まりである。

赤川省吾(あかがわ・しょうご)
 日独で育ち、ドイツ銀行フランクフルト本店などでの研修生勤務を経て1994年入社。07年から欧州駐在。冷戦期から欧州を知り、旧共産圏を含めた地域全体の政治・経済・芸術に精通する。ベルリン自由大で修士号(政治および戦後ドイツ史)。現在は編集委員の傍ら、同大付設オットー・ズーア政治学研究所に在籍。


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