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欧州情勢・西洋事情

2172とはずがたり:2017/06/20(火) 08:07:46
>>2171-2172
■欧州統合の理念巡り深い溝

 いま有権者の関心事は、政権基盤の弱まった英政府がどのように対EU交渉に臨むかだ。これまで通りEU単一市場から抜け、移民を制限する強硬路線(ハード)を貫くのではなく、何らかの制限を受け入れた上で単一市場へのアクセスを保つ妥協路線(ソフト)に転じるべきだとの論調が英メディアでは目立つ。

 もっとも英国の政治も有権者も思い違いをしている点がある。一つは「自分たちが出て行けばEUは困るはず」と信じ込んでいる人が多いこと。対英輸出を維持したいEU諸国は、英国が少しでも譲歩すれば、たちまちすり寄ってくるだろうとたかをくくっているフシがある。それゆえソフト路線といっても中・東欧からの移民を引き続き容認すべきだとの論調は少ない。これではなにがソフトなのか判然とせず、「いいとこ取りを許さない」と主張するEUと折り合うのは依然として難しい。離脱交渉を主導するのはEU27カ国であり、英国ではない。

 欧州統合はフランスにとって英米に対抗するための後ろ盾。ドイツには贖罪(しょくざい)と国家再生への誓いであり、中・東欧には一等国のステータスだ。それを経済問題としかとらえない英国。溝の深さに「改めて失望した」とあるEU高官は突き放す。

 自らを過大評価し、打算ばかり垣間見える英政府。2019年3月までにEUとの話し合いがまとまらない場合、交渉期限を先延ばしすれば「無秩序な離脱」を避けることができるという楽観論もある。だが壁は高い。19年5〜6月に欧州議会選挙が控える。英国の参加を望まぬEUが期限延長を渋る可能性がある。

 民主主義をいち早く定着させ、守ってきた英国は長いこと欧州の知識人が仰ぎ見る存在だった。だからこそ戦前生まれの英国人は欧州大陸に対し、一種の優越感を持っていたが、その優劣関係はすっかり消えた。

■対英・対EU、日本はどう向き合う

 経済面だけで見れば英国には底力がある。先行き不安で投資は鈍るが、財政・金融政策をふかせば失速は避けられるだろう。だが政治のレピュテーション(評判)は地に落ちた。昨年6月の国民投票と、今回の総選挙という2つの政治の賭けに失敗し、国家を漂流させるという失政を犯した保守党。「国際的な役割は以前と変わらない」。英政界の関係者は口をそろえるが、国際会議でのメイ首相の存在感は薄い。

 いまや英国の混迷ぶりは、傍若無人な米国のトランプ政権と並んでほかの欧州諸国の反面教師。つまり欧州解体の第一歩になると思われたブレグジットがEUの大衆迎合主義を抑え、域内の結束につながるという結果を生んだ。皮肉にも英国が危機に沈んだおかげでドーバー海峡を挟んだ対岸のEUが浮かび上がり、「ポスト・クライシス」時代を迎えたともいえる。

 そんな欧州の地殻変動に、これまで対英偏重できた日本はどう向き合うべきか。日米中などEU以外の国との連携を重んじざるを得ない英国とうまくつきあいつつ、軸足をEUに移すのが望ましい。EU27カ国と英国。経済力でも政治力でもどちらに分があるのかは明らかだ。

赤川省吾(あかがわ・しょうご)
 日独で育ち、ドイツ銀行フランクフルト本店などでの研修生勤務を経て1994年日本経済新聞社入社。2007年に欧州駐在に転じる。冷戦期から欧州を知り、旧共産圏を含めた地域全体の政治・経済・芸術に精通する。ベルリン自由大で修士号(政治および戦後ドイツ史)。現在は欧州総局編集委員の傍ら、同大付設オットー・ズーア政治学研究所に在籍。


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