したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

欧州情勢・西洋事情

1853とはずがたり:2017/03/30(木) 08:54:46
>>1852-1853
端的に言えば、その頃までに自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)などの特別な計らいが未締結ならば、両者は基本的に世界貿易機関(WTO)の枠組みに基づく「普通の関係」に移行することになる。EU域内市場における「ヒト・モノ・カネ・サービス」の4つの完全自由移動というメリットは、英国・EU間では消失する。

その場合、大陸欧州に製品を輸出している在英製造業は、関税などのコスト負担増に直面する可能性が高い。WTOのアゼベド事務局長は英紙のインタビューで、英国がEUを離脱しWTOの枠組みのみとなれば「年間90億ポンドのコスト増になる」と述べている。中でも影響が大きな品目は自動車や航空機部品などの輸送機器関連、あるいは電気機器などだ。英国内に製造拠点を持つ日系メーカーも当然、負の影響を受けることになる。

カネの面でも、国境をまたぐ子会社間の配当送金に源泉徴収税が課される可能性もある。またサービスの面では、EU域内に適用されるシングルパスポート(単一免許)を英銀や第三国金融機関が喪失した場合の影響が懸念される。ここでも特別な計らいがないとすれば、大陸欧州において新たに現地法人を設立し、シングルパスポートを取得し直す金融機関が続出するかもしれない。英国内でユーロ決済業務を不自由なく行えるかという点にも注意が必要だ。EU離脱により、決済機能の一部が大陸欧州に移ってしまう可能性は否定できないからだ。

なお、EUとの間でFTAが結ばれたとしても、EU側に輸出する際には英国製品であるという原産地証明が必要になり、企業は部品・原材料調達を含むサプライチェーン全体の再考を強いられることになりそうだ(ちなみに、EU・カナダの経済協定では、域内原産割合は50―60%)。こうした取り組みも企業側にコスト負担増として重くのしかかってくる。

このように考えると、企業の英国離れはやはり今後進むとみられ、ブレグジットはボディーブローのように英経済に効いてくる可能性が高い。確かに、ポンド安の支えもあり、ブレグジット決定後の英経済は景気拡大を維持しているが、足元で企業の景況感(PMI)は低下傾向が続いている。

また、ポンド安を背景にインフレが進む一方で、名目賃金が伸び悩んでいる現状は心配だ。実際、個人消費には減速の兆しがある。ブレグジットに伴う経済困難はまだほんの序の口だと考えたほうが良いだろう。

<EUの正念場は次の選挙イヤー「2021―22年」か>

むろん、EU側にとっても、英国との「ヒト・モノ・カネ・サービス」の自由移動を失うことは身を切る選択だ。二重コストを強いられるのはEU側の企業も同じである。

足元でユーロ圏は景気回復が続いているものの、内需主導の自律的な回復とは言えず、米中など域外需要の回復による面が大きい。この局面でのブレグジットは負の影響が大きく、本来ならば、喧嘩(けんか)別れのようなハードブレグジットを避ける経済的インセンティブがEU側にも強く働いておかしくない状況だ。

ただ、EUは政治的な求心力確保を優先し、恐らく自ら譲る姿勢を見せないだろう。前述した通り欧州は政治の季節に投入しており、4月下旬から6月にかけてフランス大統領選・議会選、秋にはドイツ連邦議会選が控えている。イタリア議会選も来年5月までには実施される予定だ。

3月15日のオランダ議会選は既存政党が勝利したが、フランスでは極右政党「国民戦線(FN)」のルペン党首がマクロン元経済相に次ぐ支持を集めている。ドイツでは右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が党内分裂で勢いを失っているものの、イタリアでは反体制派の「五つ星運動」が与党・民主党の分裂を横目に、党勢を盛り返しており、安心は禁物だ。

私は、EUの真の正念場は、次の選挙イヤーである2021―22年に訪れる(今回は辛うじて既存政党が踏みとどまる)とみているが、目前のポピュリズムの嵐を乗り切るためにも、ここで英国に甘い顔を見せるわけにはいかないとEUのリーダーたちは意を決しているのではないだろうか。

(聞き手:麻生祐司)


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板