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欧州情勢・西洋事情

1687とはずがたり:2016/12/20(火) 11:19:27
>>1686-1687
心配な点はフィヨン氏の選挙公約が、サルコジ元大統領に似た新自由主義政策である点だ。解雇の容易化、週35時間労働の規制廃止(延長)、公務員の50万人削減と労働時間の週39時間への引き上げ、年金支給年齢の65歳への引き上げ、などで、労働者の大反対を受けそうな項目がずらりと並んでいる。ルペン氏に足をすくわれないで頑張れるだろうか。

秋のドイツ総選挙ではメルケル首相4選の可能性が高いだろう。2015年の難民大量流入への積極的な受け入れ対応は結果的にやりすぎとなり、メルケル首相への批判の声は高まった。だが、ドイツの人口は現在の8300万人から2060年には7000万人まで減少するとの予測が出ている。ドイツの大企業は労働人口減少に強い危機感を持っており、それがメルケルの難民受け入れ宣言につながった。さすがに、前回2012年選挙ほどの強さはないが、社会民主党は凋落し、他の政党にもメルケル首相に対抗できるようなリーダーがいない。

今年6月に英国民はBrexitを選択した。離脱までは3段階ある。英国が交渉プランを作成し、EUに交渉を通告(第1段階)。そこから英国とEUの脱退交渉となる(第2段階)。交渉が妥結すれば、2019年7月に離脱という(第3段階)。

英国のメイ首相は2017年3月に交渉通告をすると公言し、「交渉まで手の内は明かさない」とも言っていたが、裁判所の判決により、議会で離脱方針を審議することになりそうだ。そうなると、交渉開始はずれ込むかもしれない。
国民投票では離脱票とと残留票は僅差で、世代間、地域間で判断は大きく割れている。どんな方針を出しても、すんなりとはいかない。離脱方針はまだ決まっていない。

英国、EUともにダメージ大きい
製造業はEUの関税同盟と単一市場に、農業は共通農業政策に、サービス業は単一市場にと、みんなEUにどっぷり足を突っ込んでいる。在英企業と大陸企業の間にはサプライチェーンが複雑に形成されており、英国が関税同盟から離脱すると、在英の日産やトヨタ、それに2500社の在英ドイツ企業、他の加盟国の在英企業等々の一部は英国からの離脱へ動くであろう。

共通農業政策の下で英国は約5.5兆円の農作物を輸入、1.5兆円ほどを輸出しているが、いずれも4分の3はEU相手だ。共通農業政策から離脱すると、農産物平均20%の関税、規制など非関税障壁に引っかかる。ダメージは英国・EU双方で大きい。勝者なき離脱になる。

メイ首相や閣僚はインドやアラブを訪問し、米国、中国へも秋波を送るが、英国の輸出シェアは中国5%、インドは1%で、約50%のEUとは比較にならない。40数年も一緒にやってきたのだから、切り離し自体そもそも無理な話なのだ。

英国はEU離脱を撤回するのがよいというのが筆者の考えだ。しかし決めた以上離脱しかない、というのであれば、「形式離脱、実質残留」方式を追求するのがよい。すでにブリュッセルのシンクタンクからそうした提案がなされている。

Brexit、ギリシャ問題、イタリアの銀行危機など休む間もない危機の連続を見ていると、「EU崩壊」などと妄想したくもなろう。だが、欧州はいつも大変だった。第2次大戦後、旧ソビエト連邦が欧州の「不都合な」部分を囲い込んでくれて、パンドラの箱が閉まった。だが、西ヨーロッパだけで動けた幸福な時代はもう過ぎ去った。今、本来のヨーロッパに戻ったのである。

まだEUと加盟国はその状況に慣れていない。徐々に危機を抑制できる制度作りと資金の手当てをしていかないといけない。20世紀の理想的な欧州統合の印象が強すぎて、そこを基準に考えるから「EU崩壊」という意見になるが、もっと余裕を持って見る必要があろう。

それにしても、フランスの大統領選挙は気がかりだ。フランスまでが極右ポピュリスト政権になれば、EUの危機はBrexitどころではない。フランス国民の政治的英知を期待しよう。5月にフィヨン氏が首尾よく大統領になり、秋に第4次メルケル政権が選出されれば、具体的な対策へと進むであろう。


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