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欧州情勢・西洋事情

1261とはずがたり:2016/06/26(日) 02:02:25
>>1260-1261
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こうした傾向は映画・演劇界だけではない。
ビートルズ、スミス、オアシスなどの「ワーキング・クラス・ヒーロー」を生み出して来たUK音楽シーンでも同様のことが指摘されている。現代のUKヒットチャートは高額な学費のミュージシャン養成校を卒業したミドルクラス以上の若者たちに独占されているのだ。
この傾向は保守党政権が失業保険や生活保護の打ち切り政策を行ってから、さらに悪化している。キャメロン首相はスミスの大ファンとして有名だが、スミスのモリッシーはデビューする前に何年も失業保険を貰っていた時代があった。
俳優やミュージシャンといった「食えない時代」がある職業は、裕福な親がついている若者にしか目指せない時代になったのだ。このことがUKロックの衰退に繋がっているという説もある。

グラスゴーの公立校出身の俳優、ジェームズ・マカヴォイはこの状況に警鐘を鳴らしている。
「上流階級出身の俳優が成功することに問題はないし、誰も彼らを責めているわけではない。だが、僕たちが心配しているのは、社会のすべての人々に芸術の世界に入るチャンスが公平に与えられていないということで、それがまさに今起きていることなんだ。現在は影響を感じなくとも、5年先、10年先に必ずその影響が出て来る。社会のほんの一部の階級の人々が芸術やカルチャーを支配するようになると、文化が全ての人間をレペゼンしなくなる。それはフェアじゃないというだけでなく、社会にダメージを与える」

こうした状況は映画界にはすでにダメージを与えているようだ。
『司祭』や『がんばれリアム』などの脚本家、ジミー・マクガヴァンは、
「僕はいつも労働者階級の人間の役がリアルに演じられる俳優を探している。ポッシュな人間ばかりが俳優になるようになってきたので、年々それは希少になって行く」
と語っている。伝統的に英国映画といえば、ケン・ローチやマイク・リーといった監督が撮る市井の人々を描く映画が海外からの称賛を集めてきたのだが、労働者階級を演じられる俳優がいなくなれば、こうしたジャンルも廃れるだろう。

こうした議論がある中で、大きなスキャンダルになったのが今年のBAFTA(英国アカデミー賞)授賞式における故人追悼のコーナーだった。昨年一年間に亡くなった映画人を追悼する映像に、『ロジャー・ラビット』、『モナリザ』などで有名な英国人俳優ボブ・ホスキンスが含まれていなかったのである。労働者階級出身で知られる彼を追悼映像に含まなかったことは、BAFTAのエリート主義を示していると激しく非難された。コメディアンのデヴィッド・バディエルはこうツイートしている。
「ボブ・ホスキンスが追悼映像から外されていたのは、労働者階級出身の俳優が消えて行く時代を象徴しているようだ」

BAFTAは、昨年行われたテレビ界対象の賞の授賞式でボブ・ホスキンスを追悼したので今回の追悼映像からは彼を外したという声明を発表している。
皮肉なことに、先週末の米国アカデミー賞授賞式で流された追悼映像にはボブ・ホスキンスの映像が含まれていた。

ブレイディみかこ
在英保育士、ライター
1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。保育士、ライター。2016年6月22日『ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)発売。ほか、著書に『アナキズム・イン・ザ・UK - 壊れた英国とパンク保育士奮闘記』、『ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 』(ともにPヴァイン)。The Brady Blogの筆者。


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