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欧州情勢・西洋事情

1144とはずがたり:2016/05/13(金) 10:09:51
>>1143-1144
 この手の調査はOECDが初めてではない。

 2月12日、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスは、EU離脱後はノルウェーと同じように欧州経済領域 (EEA)に加盟して単一市場に参加できるのが最善シナリオだが、現在、英国がEUに支払っている金額の83%を負担する必要が出てくると試算。しかもEUが決めた規制に従わなければならないと指摘した。

 3月21日、英国産業連盟(CBI)が「英国のEU離脱は2020年までにGDPの最大5%に当たる1千億ポンド(16兆2千億円)と95万人の雇用を失う」と警告。

 3月22日、米格付け会社ムーディーズが「英国経済はEU離脱によって影響を受けるが、その衝撃は小さい。大規模の雇用が失われることはあり得ない」と予測。

 4月12日、国際通貨基金(IMF)が今年の英国の成長率を1月時点の2.2%から1.9%に下方修正。「英国がEUを離脱すれば地域経済と世界経済に深刻な影響を与える」と警告。

 4月18日、英国の財務相オズボーンが「英国がEUを離脱すれば英国の家庭は年4300ポンド(70万円)の減収になる」と警告。

 楽観的なのはムーディーズの調査だけで、あとはかなり悲惨な内容である。しかも、エリザベス女王の90歳の誕生日を祝うため訪英したオバマが共同記者会見や英BBC放送とのインタビューで「友人だから正直に言うが、もし英国がEUから離脱したら、貿易交渉の順番は一番後回しになる」「米国との貿易協定を結び直すのに10年はかかるだろう」と通告した。英首相キャメロンはすでに当事者能力を失っている。これは米国の脅しでもなんでもなく、本音である。英国はEUの中にいてこそ米国の役に立つ「トロイの木馬」だ。英国がEUから飛び出せば、時に激しく対立する恐れが残るドイツやフランスに働きかけるテコを失ってしまう。第二次大戦以来続く「特別な関係」を保ちたければ、どうすれば米国の役に立てるか、くらい自分たちの頭で考えろと突き放したわけだ。

 ロンドンを拠点に欧州をウオッチし、世界金融危機や欧州債務危機を取材して9年近くがたつ。EUの中で英国がわがままを言い続ける方が欧州は上手く行くというのが私の結論である。欧州には、性格が異なって、それほど仲が良くない英・仏・独という「団子3兄弟」がいて初めて機能するという不思議なバランスが働く。しかし、2つの危機を経て英国とフランスの力が低下し、ドイツの首相メルケルは「欧州の女帝」と呼ばれるまでに存在感を増してきた。英国ですら「離脱カード」を突きつけなければ、EUに相手にしてもらえなくなったのも現実である。

 これまでの取材で印象に残ったのは、10年にわたってEUの行政執行機関・欧州委員会で委員長を務めたバローゾの言葉である。EUの正当性とは何かと聞かれて、「EUは連邦国家でも、超国家でもない。EUの正当性はそれぞれの国家にある」と認めたことだ。バローゾは欧州債務危機の最中、EUは加盟国による連邦に進化すべきだと主張してきただけに意外な感じがした。英国のEU国民投票に配慮した、極めて分かりにくい欧州特有の政治トークなのか。いずれにしてもEUが連邦制に突き進むのを止めたければ、英国の有権者は国民投票でEU残留を決断し、EUの中から一段と大きな声でわがままを言い続けるしかないと思うのだが......。


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