したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

ロシア・韃靼・ユーラシアスレ

771とはずがたり:2016/12/05(月) 13:19:52
>>770-771
ベーリング海峡トンネル計画もある

 驚くべきことに、2007年にロシア政府が、シベリアとアラスカを結ぶ世界最長の海底トンネルの構想を発表し、実現に向けて米国、カナダへ働きかけている。ベーリング海峡を横断するトンネルの長さは実に100キロメートルを超える。貨物輸送量は年間1億トン。実現に向けた国際会議も開かれているという。

 ロシア側はかなり本気で、2011年にロシア政府はこの計画を承認している。日本や韓国のゼネコンにも声が掛かっているようだ。2013年にはウラジオストクの西、北朝鮮国境に近いハサンと、北朝鮮の羅津を結ぶ約54キロメートルの鉄道路線が開通した。ソ連時代の南下政策の如く、ロシアは鉄道網を拡大しつつある。

 極東からEU、中東への輸送ルートとしては、船便、中国大陸鉄道ルート経由(CLB:China Land Bridge)、シベリア鉄道(TSR)経由がある。日本から欧州へは海運で40日、CLB、TSRルートで10日〜15日。中国ルートは複数の国にまたがるけれど、シベリア鉄道はロシア一国の管轄だから改良しやすい。近代化と高速化を実現すれば、数日から4日程度に短縮できるとも言われている。

 ベーリング海峡トンネルを推進するロシア政府にとって、シベリア鉄道の北海道延伸は壮大な計画のうちの1つだ。目論見としてはCLBルートに対抗する輸送経路を第一として、米国から欧州までを鉄道で結び、シベリアで生産するエネルギー資源を世界市場へ販売するという野望もある。世界規模の鉄道輸送がロシア一国の主導にならないように、日本はじめ世界各国は適度に関与する必要がある。そして日本は、世界が鉄道で結ばれたときに蚊帳の外になっては困る。だから樺太〜宗谷岬間の鉄道トンネルも無視できない。

世界にとって鉄道は「陸の船」

 日本の鉄道貨物は国際コンテナ規格に立ち後れ、運行ダイヤも旅客列車に遠慮しているために速度や輸送量で実力を発揮できない。長距離トラック輸送がドライバー不足で悩んでおり、荷主が鉄道貨物輸送に注目している好機だけど、実はダイヤや貨物駅の容量の問題で受け入れしにくい状態という。JR北海道にしても、国内農産物輸送に必要な線路を手放そうとしている。JR貨物自身も不採算路線をトラック輸送に切り替えた。積み卸し所を「オフレールステーション」とカッコ良く名付けているけれど、要するにトラック配送センターだ。日本では鉄道会社が鉄道を見限っているという現状だ。

 海外で鉄道貨物輸送が重視されていながら、日本は鉄道貨物が盛り上がらない。その理由を突き詰めると「鉄道」の存在意義が、日本と外国ではまったく違うことに気付く。大陸に存在する諸国にとって、鉄道は道路ではなく線路でもない。「航路」なのだ。

 沿岸地域は大型貨物船で輸送できる。しかし、アメリカ大陸やユーラシア大陸の内陸にある大都市、冬場に港が使えないロシアの多くの都市にとって、船は使えない。そこで鉄道が代替手段になっている。だから米国では大型コンテナを重ねた「ダブルスタック」というコンテナ列車や、全長2キロメートルにもなる長編成の貨物列車が走る。ロシアも中国も貨物列車は長い。

 欧州では、線路を2本並べても上り線と下り線を分けた複線にせず、2本の線路とも双方向に使える方式を使う路線がある。これも線路というより航路に近い考え方だ。列車は常に空いている線路を進んでいく。アジア諸国では日本のようにダイヤをきっちりと定めず、閉塞システムだけ用意して列車の運行は臨機応変、到着駅のホームがすべて列車でふさがっていると、他の列車が動いてホームを空けるまで、駅の手前で待たされる、という運行もあるらしい。駅を港のように使っているわけだ。

 運行時刻の正確さに鈍感だったり、日本のようにATS(自動列車停止装置)やATC(自動列車制御装置)などをきっちり整備しないという習慣は、鉄道を船として扱っているからではないか。

 日本はどうか。そもそも大量輸送という概念が欠落していた。国鉄型コンテナは小口輸送に根ざした12フィート形が普及して今に至る。これが大量輸送から乗り遅れる理由となった。ISOコンテナや国内10トントラック相当の31フィートコンテナの対応は始まったばかりだ。

 ロシアの線路と接続すれば、日本の鉄道関係者は、大陸の鉄道が持つ大量輸送という役割を実感するだろう。ISOコンテナを標準とした施設の見直し、新幹線貨物輸送の実現、オフレールステーションの鉄道への復帰もあるかもしれない。鉄道貨物の重要性が認識されると、今まで旅客列車だけで赤字だった路線にも貨物列車が走り始める。そのときにようやく「ローカル線を残して良かった」「廃止して後悔した」という声が上がるはずだ。

 日本国内では改軌も鉄道貨物モーダルシフトも進まないけれど、日本は外圧を受けた改革は得意だ。北からの「黒船」に飲み込まれないように、国は物流政策に確固たる信念とリーダーシップを発揮してほしい。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板