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情報メディア綜合スレ

343とはずがたり:2017/01/05(木) 17:56:04

2011年、東日本大震災、福島原発事故を境にして、原発をめぐって賛否が激しくわかれた。
この事故を受けて、原発をやめるべきである。一刻も早く、すぐさま脱原発を宣言すべきなのに政府は何をやっているのか。一方で、事故があっても推進を強く求める声もあがった。インターネット上でも、激しい対立構造ができあがった。
震災後、はじめて発表した長編「夜は終わらない」。その一節で、星野さんは架空の「夢のエネルギー」核融合工場を巡る推進派、反対派の攻防を描く。
ひょんなことから、工場で働くようになった「俺」は、推進派の言葉に夢を託す。いわく、うまくいけば推進派の想像を超えていく変化をもたらすものであり、ここで働くことそのものに愛着を覚える。
反対派ゲリラに工場を襲撃され、捕まった男は推進派のウソを教え込まれる。あらゆる核を認めないという彼らは、推進派の理屈にはいくつもウソが仕込まれていると語る。反対派にとって反核は「信仰」であり、「信仰心が厚いのは、推進派が強大な権力だからだよ。何しろお国だからね」という。
やがて、推進派と反対派の抗争は激しさを増し、スパイ、二重スパイが暗躍をはじめ、もはや誰が推進派で誰が反対派なのかがわからなくなる。
抗争に巻き込まれた「俺」も自分の立場がわからなくなり、一体、どっち派なのか悩んでしまう。最後まで残るのは、対立のための対立であり、なんのための対立だったのか、それすらぼやけてくる。
こんなセリフがある。お前もそろそろ理解しただろう、とある登場人物は言う。「推進派も反対派もさして変わらんということを。そのわけは、対立という形にある。対立という構造は鏡みたいなものなんだよ」「(対立は)左右が逆になった自分を見ているだけだ」

「二項対立に回収される言葉は不毛」
架空の物語なのに、そこに投影されているのは、この社会そのものだ。星野さんはこんな考えを込めた。
「正しいのか、間違っているのか。二項対立に回収されていく言葉は不毛です。それを無効化したいと思っていました。そこで考えないといけないのは、結果として対立のための対立のなかで、誰が得をするのか。どんな問題が残り、誰が損を被るのか」
星野さんの小説のなかに、本当の意味での悪人はあまり登場しない。どこかにいそうな平凡な人たちばかりだ。『呪文』のなかで、デマを流した客も、対抗した居酒屋の店主も、立ち上がった有志も誰かを排除しようなんて思って行動した人は誰もいない。

しかし、結果的に進んでいったのは「自分たち」と「それ以外」を選別することだ。
「自分たちの正しさを認めさせようとすると、100か0かしか選択肢がなくなる。正しさを証明することが自己目的化していく。例えば9割の達成でも、0になる。でも、本当にそれがいいんですか?」
100と0の間に、切り捨てられる1から99がある。それがあたかも、はじめから選択肢にすらないかのようになる。より先鋭化すると、100もしくは0以外は敵だという選別が働く。一度掲げた「正しい言葉」に自分たちも気づかないうちにがんじがらめになっていく。
「正しさに規定されなければ、もっと自由に考えられるはずで、選択肢はたくさんあるってことなんです。原発問題にもあらわれていますが、何かを選択するということは、別の誰かに負担を強いるということです。問題は複雑になっているから、簡単には断言できないことが増えていくはずなのに……」
「がんじがらめになると、なにかを話しているのに、個人の言葉じゃないように聞こえてくる。運動の言葉、集団の言葉が優先されて、その人が本当に自分の言葉で語っているようには聞こえてこなくなるんです」

「福島の人が??といったから」原発はやめるべきだ、あるいは、復興は必要なのだ。そんな言い方をする人はいつだっている。「当事者」が思っていることはひとりひとり違うはずなのに、個人の声としては聞かれず「福島」の声になっていき、誰かに代弁されていく。
「原発に反対する人へのシンパシーもあります。でも、推進するという人も反対する人も正義に酔って、問題をあまりにシンプルにしてしまう。複雑な問題がなかったことになると感じました」
「自分たちの陣営に味方した人だけでない、本当は、原発を受け入れざるをえない疲弊する地方に住む人たちの声、被災地に住み続ける人たちの声、避難先で人生を終える覚悟の人の声、それでも原発で働かざるをえない人の声……。小さな声を聴くことが必要だったと思います」


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