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バイオ燃料・エタノール・新エネルギースレ

4649とはずがたり:2022/10/21(金) 17:39:35
>>4647-4649
 また再エネ100%とは、年間の再エネ発電量と電力需要を一致させるものではない。独の電力需要はピーク時で80GW(ギガワット)程度であるが、専門家の見解では太陽光と風力の変動再エネが400GW、バイオマスや水力などの制御可能な再エネが20GW(これはすでにある)、制御可能な電源(主にガスコジェネ)が60GW必要である。このようなシステムでは、年間の半分以上の時間で電力が余るようになり、卸価格は0セント以下になる(欧州では電力が余れば価格がマイナスになることもある)。もちろん電力系統運営は需給一致が原則なので、余剰電力は水素を作る、熱として使うか蓄える、さらには電気自動車などの交通で使用もしている。また不足時は貯蔵したガスによる小規模ガスコジェネで対応する。小規模分散型設備の統合が必要なため、デジタル技術で設備を遠隔制御するバーチャル発電所(VPP)と呼ばれる事業者がその役割を担う。実際、独の系統運営者は周波数調整には小規模分散型とVPPが従来の大型電源よりも効率的であると認めている。

 このようなシステムでは、(安価だが柔軟性が低く、一定の出力で運転することが最も経済合理性が高い)●従来のベースロード電源は採算がとれない。そこでこれらを閉鎖しつつガスコジェネなどの導入を進めねばならない。言い換えれば、ベースロード電源が採算を確保するには再エネによるシステムは諦めるか、別途に支援が要る。日本が採用した容量市場はEUでは補助金と捉えられている。政策的観点からは、ベースロード電源は「残るか」ではなく「残すか」が問われる。

 新しいシステムへの移行には多額のコストがかかる。しかしEUの排出権取引強化による化石燃料の価格上昇などから、独では省エネ込みでこれらを負担しても30年代半ば以降はエネルギーシステム全体のコストが下がり始め、40年代にはEUの中でもエネルギーコストが低いほうになる可能性は高いと言われてきた。

 しかし従来電源の採算性の維持や安い露産ガスの利用拡大のため、独は産業界も一般市民も負担増を拒否してきた。結果論ではあるが現在のガス価格の高騰を考えれば、エネルギー転換への負担のほうが安くついたであろう。巨大なガス貯蔵設備を持つ独では、再エネ発電増によってガス発電を減らし、冬にガスの備蓄を使えたからだ。

 エネルギー危機の最中に成立した新政権に参画している社会民主党(SPD)と緑の党は、こうした考えから●再エネの大幅な拡大を法制化する準備を始めた。7月7、8日に議会で採決されたエネルギー関連法改正は系統整備、再エネの大幅増などを迅速に進めることを目的としており、過去20年で最大の改正となる。


(後略)


◆西村健佑〔にしむらけんすけ〕
1981年大阪府生まれ。立命館大学経済学部卒業後、2005年よりドイツ在住。ベルリン自由大学環境政策研究所環境学修士取得。ベルリンのコンサルタント会社に勤務し、17年に独立してコンサルタント会社Umwerlin代表となる。以降、エネルギーデジタルビジネス、地方創生を中心とした調査業務に従事。共著に『進化するエネルギービジネス』など。


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