>>3965
代表的なプロジェクトは、米国の北東部マサチューセッツ州とカナダの南東部ケベック州を結ぶ「New England Clean Energy Connect」である。最大120万キロワットの容量で2つの地域を結ぶ計画だ。カナダの安価な水力発電の電力をより多く米国に供給できる一方、米国内で風力・太陽光発電の電力が増加した場合にはカナダに送って需給調整を図る。
もう1つの重要な対策は電力の貯蔵である。現在のところ米国で最も多く使われている貯蔵方法は揚水発電だ。2017年の時点で2280万kW(22.8GW)の容量がある。大きな容量だが、日本の揚水発電(2760万kW[27.6GW])と比べると小さい。
風力や太陽光と蓄電池を組み合わせて、需給調整力の点でもガス火力と比べてコスト競争力の高いプロジェクトが出てきた。電力会社のXcel Energyが2017年末に実施した入札では、補助金がつく条件ながら、風力+蓄電池が2.1セント/kWh、太陽光+蓄電池が3.6セント/kWh(いずれも入札価格の中間値)という記録的な低さになっている。今後さらに蓄電池のコスト低下が進み、火力発電よりも有効な需給調整手段として使われる可能性が高まってきた。
電力貯蔵の分野では、カリフォルニア州の取り組みが政策面で最も先行している。過去10年間に、2つの法案(Assembly Bill 2514、同2868)と支援策のSGIP(Self-Generation Incentive Program、自家発電促進プログラム)を実施した。2013年のAB2514により、CPUC(California Public Utilities Commission、カリフォルニア州公益事業委員会)がカリフォルニアの大手電力会社3社に対して、2020年までに合計132.5万kWの電力貯蔵能力を調達するように命じた(設置完了は2024年)。その3社はPacific Gas and Electric(PG&E)、San Diego Gas and Electric(SDG&E)、Southern CaliforniaEdison(SCE)である。各社ごとに送電網・配電網・利用者側の目標値が定められている。
2017年2月の時点で3社を合わせて47.5万kWの調達が完了している。
4.電力市場への影響
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米国では最近2年間の卸電力の価格が極めて低い水準で推移した。…さらに石炭火力発電に対する厳しい環境規制(特に発電所からの排出量を制限する「Mercury and Air Toxics Standards」の施行)が加わり、わずか7年間で全米の半数以上の石炭火力発電所が廃止に追い込まれた。
2017年10月の時点で262カ所の石炭火力発電所が2010年以降に廃止あるいは廃止決定の状態になった。残っているのは261カ所である。しかも運転中の石炭火力発電所のうち、2017年に収入が経費を上回って利益を稼いだのは半分だけだった。