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バイオ燃料・エタノール・新エネルギースレ
3662
:
とはずがたり
:2018/10/27(土) 14:33:30
>>3661
一方、最大の課題が低いエネルギー密度だ。入出力特性とトレードオフとなるものだが、LiBが長時間にわたって電力を供給できるのに対し、フライホイールは30分程度しか供給できない。また、円盤を支える軸受けは磨耗により定期的なメンテナンスが不可欠だ。ただし、超電導磁気軸受けを採用し、円盤自体を浮かせることで磨耗をなくすといった取り組みも実施されている。
用途は再エネの出力変動抑制が中心。PVは天候の影響を受けるため出力は常に変動する。正午付近が最も出力が高く、早朝や夕方は低いのが一般的だ。出力変動抑制は出力が減少した際に電力を供給することで著しい変動を抑える。欧米では電力企業向けに「アンシラリーサービス」を提供する企業が増えており、その際のバッテリーとして採用されるケースがある。なお、他には鉛電池やNAS電池が採用されている。
また、石油・天然ガス採掘時のディーゼルエンジン発電機の電源としても利用されている。ディーゼル発電機は常時稼働し、NoX(窒素化合物)などの環境汚染物質を発生させるが、フライホイールをバックアップに使うことでピーク時に電力を供給する。フライホイールから電力が供給されている間はディーゼルエンジン発電機をオフにできるため汚染物質の発生が軽減される。
このほか、鉄道における回生電力の有効利用も考えられている。鉄道車両がブレーキをかけた際にフライホイール蓄電システムを稼働させ、発車時のエネルギーとして活用するものだ。
フライホイールメーカーとしては、米ボーイング、加テンポラル・パワー、独ATZなどが代表的だ。ボーイングは出力100kW・充放電量5kWh、テンポラルは出力500kW・充放電容量50kWh、ATZは出力250kW・充放電量5kWhのシステムをそれぞれ製品化している。
テンポラル・パワーのフライホイール
テンポラルは、カナダ、北米、南米、欧州、中東など10件以上、出力250MW以上のプロジェクトに参画している。ここ数年はNRStor、Hydro One Networks、アルバ島などの各プロジェクトに導入している。NRStorには同社オンタリオ拠点に2MWシステム、Hydro Oneには5MWシステム、アルバ島には5MWシステムをそれぞれ導入している。いずれも再エネの出力変動抑制用途だ。アルバ島は再エネ電力100%を目指しており、合計10MWのフライホイールを導入する計画だ。
一方、国内ではサンケン電気(株)が注力している。大きな特徴の1つが同社の得意とするパワーデバイス技術を活用している点だ。もともと、フライホイールの電力変換はAC-AC変換で済むため電力効率が高い(LiBなどはAC-DC-AC変換)。この電力効率をさらに高めるため、SiCを用いたMOSFETをスイッチング素子に採用した。従来のSiを利用したIGBTと比較してスイッチング速度を大幅に高めることで電力損失を低減するとともに、冷却ファンを不要とした。
なお、同社や長岡技術科学大学らはNEDOプロジェクト「短周期周波数変動補償のためのネットワーク型フライホイール蓄電システムの開発」の委託先として選定されている。これは量産可能な多数の小規模フライホイールを使用し、それらを高速ネットワーク技術で結んで大規模蓄電システムを構築するもの。
また、同「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」のもと、公益財団法人 鉄道総合研究所、クボテック(株)、古河電気工業(株)、(株)ミラプロ、山梨県企業局は超電導を利用したフライホイールを共同開発している。実証機は出力300kW・充放電容量100kWhを実現するなど、世界最大級となる。15年に山梨県が運営するメガソーラー発電所「米倉山太陽電池発電所」に設置し、実証実験を行っている。
実証機の最大の特徴が超電導磁気軸受けを採用することによる低コスト化だ。加えて、フライホイールを「大径化」「高重量化」することで、より大きなエネルギーを貯えることに成功した。大径化では、炭素繊維の織り方を工夫することで直径2mを実現した。
電子デバイス産業新聞 編集部 記者 東哲也
■投信1編集部からのコメント
フライホイールは、一般にはなじみが薄い蓄電デバイスかもしれません。しかし、再エネの蓄電機能やシステムの発展はそのまま分散電源の可能性を広げることにつながります。とかく再エネでは発電機能に注目が集まりがちですが、今後蓄電システムに拡張性が出てくれば、さらに分散電源市場のポテンシャルを議論できるようになると思われます。
電子デバイス産業新聞×投信1編集部
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