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バイオ燃料・エタノール・新エネルギースレ

2159とはずがたり:2016/04/07(木) 18:32:31

2015年10月20日 07時00分 更新
水素時代を目前に撤退、木質バイオマスによる水素製造が4年で終わる
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1510/20/news023.html

九州を中心に石油製品を販売する新出光が福岡県で4年前に稼働させた水素製造プラントを閉鎖した。地域の間伐材など木質バイオマスからCO2フリーの水素ガスを製造する先進的なプロジェクトだったが、技術的な問題を解消できず、バイオマス水素の製造・販売事業から撤退する。
[石田雅也,スマートジャパン]

 新出光は福岡県の大牟田市で2011年10月に「福岡ブルータワー」の試運転を開始した。世界で初めて木質バイオマスをガス化して水素を製造する商用プラントとして注目を集めたプロジェクトだ。建設費の3分の2を農林水産省の助成金でまかなう国家的な取り組みでもあった。

 新出光の100%出資による子会社「イデックスエコエナジー」が事業化に取り組んできたが、2015年10月15日に撤退を決定した。当初の計画ではプラントが稼働して6カ月間の試運転を経て、2012年4月に商用運転へ移行する予定だった。新出光によると、プラントの中核技術である「ガス化過程におけるヒートキャリア(熱媒体アルミナボール)によるタール除去」を実現できなかったことが事業撤退の要因だ。

 福岡ブルータワーの水素製造システムはジャパンブルーエナジー(旧・日本計画機構)が開発した「ブルータワー技術」を採用したものである。原料になる木質バイオマスに熱を加えてガス化した後に、そのガスから高純度の水素ガスを精製する仕組みだ(図2)。バイオマスから水素を製造できるため、CO2(二酸化炭素)を排出しない水素製造方法の1つになる。

http://tohazugatali.dousetsu.com/l_shinidemitsu1_sj.jpg
図2 木質バイオマスを使った水素製造システム。出典:新出光

 このブルータワー技術で最大の特徴が、熱媒体に「アルミナボール」を使って水素を大量に含んだガスを精製できる点にある。アルミナボールは酸化アルミニウムを直径1ミリメートル以下の球状に作ったセラミックスの1種で、熱の伝導率が高く、石油やガスに含まれる不純物を吸着する性質がある。

 木質チップや下水汚泥などのバイオマス原料を高温に加熱したアルミナボールに接触させると、メタンを主成分にしたバイオガスが発生する。さらに高温のアルミナボールをバイオガスと水蒸気に接触させて化学反応を起こすことで水素ガスを精製することができる(図3)。ジャパンブルーエナジーが日本国内のほかに海外でも特許を取得した独自の技術である。

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図3 バイオマスから水素ガスを生成する「ブルータワー技術」。出典:ジャパンブルーエナジーほか

1日に7200立方メートルの水素

 通常の水素ガスはLNG(液化天然ガス)から作るためにCO2(二酸化炭素)を排出するが、バイオマスを原料に使うブルータワー技術ではCO2排出量が75%も少なくなる。加えてアルミナボールをプラントの内部で循環させることにより、機器の閉塞トラブルなどの要因になる不純物のタールを除去できる利点がある。

 ところが福岡ブルータワーではアルミナボールによるタール除去のプロセスを計画どおりに実施できなかった。そのために高純度の水素ガスを安定して製造することができず、事業化を断念する結果になった。すでに製造プラントは9月末に閉鎖していて、今後は解体する予定だ。事業会社のイデックスエコエナジーも解散する。

 当初の計画では1日に15トンの木質チップを原料に7200立方メートルの水素ガスを製造する目標だった。トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」は水素1立方メートルで10キロメートル程度の走行が可能なことから、1日あたり7万2000キロメートル分の水素を供給できる能力に匹敵する。新出光は燃料電池車の普及を前に、バイオマスを使った水素製造・販売事業から撤退することになる。

 ブルータワー技術は福岡のほかに全国3カ所で実証プラントが稼働している(図4)。さらに岩手県の宮古市、石川県の輪島市、宮崎県の串間市では商用プラントの建設計画が進行中だ。地域のバイオマス資源を活用してCO2フリーの水素を製造できれば、将来に向けて日本の再生可能エネルギーを拡大する有効な手段になる。

図4
第1号実証プラント 徳島県阿南市:2005年完成
第2号実証プラント 島根県出雲市:2006年完成
第3号実証プラント 群馬県渋川市:2013年完成

 福岡で解決できなかった技術的な課題を克服することによって、次世代のバイオマス水素製造技術の実用化が前進する。建設中の商用プラントが早く安定稼働を開始できるように期待したいところだ。


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