したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

バイオ燃料・エタノール・新エネルギースレ

1774とはずがたり:2015/09/09(水) 12:02:03
>>1773-1774
リン欠乏条件でも増えるナンノクロロプシス

 今回の研究でクラミドモナスではなく、ナンノクロロプシスを選んだ理由は2つある。1つは高密度で培養でき、油脂の合成能力が高いからだ。

 「培養密度の制限は、クラミドモナスが107個/ml、ナンノクロロプシスが109個/ml。ナンノクロロプシスの細胞は少し小さいものの、(単位体積当たり)10倍以上の油を蓄積できる」(太田氏)。

 もう1つは、クラミドモナスはリン欠乏条件で油脂の他にでんぷんを蓄積する性質があることだ。ナンノクロロプシスであれば、油脂に限定できる。

遺伝子導入でさらに油脂合成能力を高める

 前回の成果は、クラミドモナスのプロモーターと遺伝子をクラミドモナスで利用した。今回は、同じプロモーターと遺伝子をナンノクロロプシスに導入した。

 導入後、クラミドモナスのプロモーターと同TAG合成遺伝子は十分に機能した。クラミドモナス(緑藻)とナンノクロロプシス(二次共生藻)は生物としてかなり異なる。それでもクラミドモナス由来の遺伝子などがナンノクロロプシスでもうまく働いたことに、意義があるという。

http://tohazugatali.dousetsu.com/yh20150909bio_studies_292px.png
図3 2014年の研究と今回の研究の関係 出典:東京工業大学(一部本誌が編集)

 以上の結果をまとめると、図3のように研究が進んだことになる。上段は遺伝子などを導入していないクラミドモナスを通常の培養条件においたときの状態を表す*3)。盛んに光合成が進むものの、油脂の合成量は少ない。条件が良いため、油脂の備えが必要ないためだ。

 中段は同じクラミドモナスを栄養欠乏条件においたもの。油脂の合成量は多くなるが、光合成は進みにくい。その後、2014年の研究によって、遺伝子などの導入を進めた。

 下段は遺伝子導入後のナンノクロロプシスでの結果だ。油脂の合成量は多く、光合成も十分機能している。2014年に得たクラミドモナスでの成果をナンノクロロプシスでさらに広げた。これが、今回の1つ目の成果だ。

*3) 図3にあるMGDGは葉緑体の主要な膜脂質。MGDGがうまく合成できないと、光合成が進まず、油脂ができにくい。

遺伝子導入で油脂合成量が増えた

 遺伝子導入によって、どの程度、油脂の合成能力が高まったのだろうか。

 TAG(トリアシルグリセロール)の値を見ると、遺伝子導入以前であってもリン欠乏条件で、TAGの合成能力が約6倍に増えている。遺伝子を導入すると、これが9倍以上に高まった。

脂肪酸の種類を制御できた

 油脂の量を増やすという研究テーマでは成果を得た。もう1つの研究テーマである油脂の組成の制御では、どのような成果があったのだろうか。

 特定の脂肪酸(オレイン酸)の合成のみを、増やすことができた。

 図5(略)は、トリアシルグリセロールに含まれるオレイン酸の量がどのように変わるのかを示したもの。コントロール株が合成したオレイン酸の約2倍の量を遺伝子導入によって得たことが分かる。

 太田氏は今後の研究の方向性について、次のように語った。「産業への応用を考えると、重要なのは油脂の量と蓄積される油脂の質が高いことだ。いかにして目的に応じて質の高い油をとり出せるか。まずは窒素やリンの濃度に注目したい。窒素やリンを少しだけ与えた条件を調べ、油脂合成の制御を進める。最初から低い濃度で培養が可能かどうかも調べたい。さまざまな条件下で遺伝子にどのようなスイッチングが起きるのかということだ。次にナンノクロロプシスなどに導入する遺伝子の種類を変え、オレイン酸以外の合成を狙いたい」。

 微生物に大量の油脂を安定して合成させる研究が複数進んできた。今後は、狙った油脂だけを作るよう微生物をデザインすることが必要だという主張だ。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板