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乗合自動車(バス)総合スレ

2023チバQ:2022/12/28(水) 16:53:54
■規制緩和の弊害は「質が落ちたこと」

 青野さんが言う。

 「規制緩和による最大の弊害は、タクシー業界の質が落ちたことだと考えています。以前の仙台は食べていくには十分な市場がありましたが、事業者や運転手が増えたことで、私自身も営業収入が半分以下に落ち込んだ。

 そんな状況ゆえにお客様の奪い合いになり、結果マナーが低下してタクシー離れが進むという悪循環が生じ、乗務員は生活ができないから人が離れていく。結果、人材不足となり、現在は人がいないから稼働がしたくてもできないという社もあるくらいです。とくに若いドライバーの数は、本当に少なくなってしまった。私自身、今の状態を招いた発端は、規制緩和だったと考えていますよ」

 秋保交通は車両数が12台という小規模な会社だが、客単価は仙台でも随一の高さがある。従業員は平均年齢で70歳を超えているなか、なぜそんな高単価を稼げるのか。青野さんが2005年に代表に就任して以降、注力したのは定額制のオンデマンド交通だった。

 仙台は中心部から5、6キロ圏内がホットゾーンだが、市内の中心部から20キロほど離れた場所では同じやり方は通用しない。そのため、秋保から仙台市内や空港といった5000円程度の依頼が一日に何本も入るシステムづくりに腐心したという。背景にあったのは、年々強まる危機感だ。

 「仙台は遅かれ早かれ自動運転の時代が来ると思っています。それは外的な要因というよりも、単純に乗務員の確保がかなり難しいから。そんな時代が訪れた際、強みになるのは顧客を大切にしていること、いかに地域に根付いているか、という点です。それは規制緩和の影響をモロに受けた仙台で営業しているからこそ、強く感じることでもあります」

 仙台のタクシーは、この土地にしかない特徴も目立った。例えば多くの車体カラーが白色であるということ。ある老舗タクシー会社ドライバーは、「昔から白の車両が多いが、ビジネス客や学会で訪れる方が多い土地柄のため、黒塗り車を希望されることも珍しくない。ジャパンタクシーも含めて、導入を進めたいが金銭的に難しい部分もある」と漏らす。

 タクシー乗り場も市内中心部に24カ所も点在し、繁華街の国分町あたりは荷さばきスペースも多く、乗降者のスムーズさも目についた。

 中でも印象的だったのは、東日本大震災の被災地を周る「語り部タクシー」の存在だった。NPO法人宮城復興支援センターと宮城県タクシー協会などが協力のうえ、2012年10月から始まったこの企画は、被災地の復旧・復興、当時の記憶を風化させないという意味合いが込められている。

■利用者は減っても後世のために残していく

 前出の尾形さんによれば、2018年までは平均的に年間900件、3000人程度の利用者がいたという。しかし、2019年以降は減少傾向が続き、昨年は年間約65件、利用者ベースでは210人程度に留まっている。

 尾形さんが続ける。

 「被災時の復興現場を知る乗務員さんを語り部に認定しています。実際にお客様からもそういった方を指名されることが多かったので。担当する乗務員は仙台だけで2013年当時は200人程度いましたが、現在は140人ほど。利用者の数は減り、担当できるドライバーも減少していますが、参加いただいたみなさんは、想像していたよりも大きいこの地の傷痕に驚かれます。

 そんな声を聞くたび、語り部タクシーは後世のために残していくことが必要だと感じますね。利用される人の数が減っても、今後も続けていく予定です」

 規制緩和の影響を最も強く受けた仙台は、試行錯誤を重ねながら適正化のために尽力を続けている。ただそれでもなお、負の連鎖が色濃く残っていることを同時に感じるのだ。

栗田 シメイ :ノンフィクションライター


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