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Airline & Airport(航空会社・航空路線・空港)スレ

7044チバQ:2020/07/01(水) 22:33:29
破綻処理のおかげで優良会社に
Photo by GettyImages

 ところが、政府や証券当局はJALの破綻処理に当たって、この「クレジット・メモ」を巡る会計処理を不問に付した。代わりに、政府として巨額の資本注入を行ったばかりか、貸し手責任という論拠でメインバンクに債権放棄をさせたうえ、株主の株主責任も問い株券を紙切れにした。

 その結果、JALは、「クレジット・メモ」の不適切な会計処理によって巨大な不良債権と化していた機材の整理を一括して進めることができたのだ。

 もう一度、保有機材の推移のグラフをみてほしい。破綻前の2009年3月期に279機あったJALの機材は2012年3月期に215機と2割以上も減った。

 この機材減らしは、老朽化して燃費が悪い機材だけでなく、多過ぎて交換用のエンジンや部品の保有負担がかさんでいた機種の整理や、「クレジット・メモ」の不適切会計処理の積み重ねで償却負担が膨張していた機材の処分を可能にしたのだった。

 さらに、JALは、国策救済による巨額の資本注入や債権カットによって有利子負債の元利払い負担からも解放された。このことは今日に至るまで、JALの機材更新戦略を容易にしている。JALは、2012年3月末の215機から、2020年3月末までの間に26機を新たに手当てしたが、過度に借入金を増やすことなく、自前の利益の範囲内で機材を手に入れることができたのだ。

 注目してほしいのは、リースによる調達をピーク時(2009年3月末)の113機から2020年3月末の24機へと、実に4分の1以下に減らすという“離れ業”を達成した点である。

 機材を自前の利益の範囲内で普通に購入すれば、負担は適切な償却負担だけでキャッシュの流出は伴わない。ところが、リースの場合は、実際に運航しようがしまいが、毎年決められたリース料を支払う必要があり、固定費として重くのしかかるのだ。

 つまり、JALは破綻処理という国策のおかげで、固定費負担の極めて小さい航空会社に生まれ変わった。財務体質に着目すると、大手航空会社の中では世界1、2位の座を争う優良会社に変身を遂げ、そのポジションを維持して来た。

救済のカギとなった「8.10ペーパー」
写真:現代ビジネス

 この過程でもう一つ大きな意味を持つのが、「8.10ペーパー」と呼ばれたJALに対する国土交通省の行政指導である。

 皮肉なことに、この行政指導は、本来の目的とは正反対の効果を発揮して、JALを救う結果に繋がっているのだ。名前の由来は、この行政指導が2012年8月10日に発出されたことに拠る。

 当時、財務的にピカピカの会社に生まれ変わったJALの再上場が1ヵ月後に予定されていた。この行政指導は本来、JALの反転攻勢を恐れた旧ANAや、民主党政権主導の国策再建が気に入らない自民党航空族などの不平と不満を抑えるための措置で、国土交通省航空局がJALの投資や路線の拡大計画を厳しく制限するものだった。

 対象期間中の4年8ヵ月、JALは行政指導で新規路線の獲得や機材などの投資を制限された。JALはおおいに不満だったが、結果として、この行政指導はJALの固定費の増大を防ぐ歯止めになり、想定はしていなかったが、コロナショックの影響を抑える役目も果たしたのだ。

 言い換えれば、ANAをJALの攻勢から守ることが主眼だった「8.10ペーパー」が、意図せずに、JALを救ったのである。

 有利子負債の推移を記したグラフをみてほしい。

 (※注:「JALの有利子負債の推移」は、2010年3月が同社の破綻に伴う更生手続き中でデータがないため、当該部分は破線で示しています)

 破綻の影響で2010年3月期は決算集計をしていないため不連続になっているが、JALの有利子負債残高のピークは2009年3月期の8015億円だ。そして、破綻処理のおかげで、再上場直前の2012年3月期には10分の1以下の572億円に激減した。

 政府主導の破綻の後、前述の行政指導もあって、JALは石橋を叩いて渡るケチケチ経営を強いられたので、コロナショックに見舞われた2020年3月期の有利子負債残高も1884億円とライバルの4分の1以下に抑えられていた。10年以上前の国策救済やその後の行政指導がJALにもたらした恩恵は計り知れない。


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