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Game全般

413名無しさん:2015/06/14(日) 22:18:23
>>412

セオリーもデータも、自分の経験すらも役に立たない
 ――桜井さんには何を求めてお会いされたんですか。

 「そうですね。セオリーやマニュアルで表せないものを知っている人という感じなんです。そういう人は、きっと世間に一杯いるんですよ。でも、どこにいるかわからないんで。いや、ホントに。それこそ町工場の職人さんとかにもいるはずなんです、絶対に。でも、どこにいるかわからないじゃないですか。だから、知っている人で、そういうことを深くわかっている人なんじゃないかなと」

 ――セオリーやマニュアルで表せないもの、将棋においては? 
 「結局、羅針盤が利かない場面って、やっぱりあるんですよ。乱戦とか混戦になったときですね。例えば、序盤だったら形とかセオリーである程度は決まってきますけど、局面が進んで未知の領域に入ると前例は全くなくなっちゃうんで。セオリーもデータも、自分の経験すらも役に立たない。そのときにどうするか、という問題は常にあるんですよね。そこは、全体から見れば、実際は小さい部分で重要じゃないかも知れないですけど、そうは言っても、そういう場面もあるということは間違いないんで」

 ――桜井さんから知りたかったことは、将棋に役立たせるため? 
 「ただ、それが何に役立つかはわからないんですよね、ええ。因果関係で証明できるものじゃないんで。だから・・・・・・わかりません(笑)」

 ――漠然と、曖昧としてる。

 「うん。でも、そういう話を聞くことは大事なのかなぁと。皆、独自に切り開いていってるものなんで。自分とは全く違ったアプローチ、考え方、発想から、何かヒントを得られるということはあると思っています」

 ――ただ、講演会で羽生さんが聞いていることは、既に思っていることを確認しているように見えたんですが。柔らかさ、健やかさ・・・・・・。

 「ああ、そうですね。思っているというよりも、こう、漠然とクエスチョンマークがつくことなんですよ。それに対していろんな答えが返ってきますけど、そこがまあ、面白いところで・・・・・・でも、あんまりお客さんのことは関係なく話してましたね(笑)」

 桜井に聞いていた哲学的なことは、既にわかっていることだと思っていたが、そうではないと言う。そう聞いて私は、メンタルをテーマにした前回のインタビューでのやりとりを思い出した。

 ――本当の強さとは何か。また、本当の弱さとは何か。羽生さんはどう考えてますか? 
 そう尋ねると、羽生は「ああ・・・・・・」と低く唸り、陽気に話していたそれまでとは一転、深刻な表情になった。一瞬、あの独特な透明感のある白い眼に変わったように見えた。

 「そうですねぇ・・・・・・よくわからないですね。うん・・・・・・わからないですね、本当に・・・・・・」

 そう言うと、俯いて黙りこくってしまった。

 ――わからない・・・・・・ただ、技を突き詰めていくときに曖昧さも大事、と。それは、複雑な
ものを複雑なまますっきりさせないことに耐えられる、そういう強さのことかなとも思うんですが。

 「あ、そうですね。もちろん、漠然とした状況に耐えられるかどうか、ということは大事なことだとは思っています。そういうものを乗り越えないと、強いとは言えないと思いますけど・・・・・・ええ」

 ――簡単に答えを出さない、と? 
 そう確認すると、「いや」と即座に否定して、今度は顔を上げ、きっぱりと言った。
「出さないというか・・・・・・出ない、ということなんじゃないですかね。答えが出ないとか、答えがわからないとか、答えがないっていうものに対して、どれだけ粘り強くやっていけるか、ということだと思いますけど」

 答えがないものにどれだけ粘り強く対峙できるか・・・・・・。そう聞いて、羽生の心の深遠を垣間見た気がしたものだった。恐らく、桜井に聞かざるを得なかった哲学的なことも、羽生は本当にわからないのだろう。


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