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Tohazugatali Book Review

1小説吉田学校読者:2006/05/29(月) 22:32:07
新スレ誕生。古今東西、森羅万象、硬軟織り交ぜ、新刊・旧刊問わず、読んだ本、読もうとする本、読んでない本、読ませたくない本をああだこうだ言うスレ。

364とはずがたり:2016/05/16(月) 19:50:59

書籍にまつわる都市伝説の真相--委託販売、再販制度は日本だけなのか
http://japan.cnet.com/sp/ebook/35029694/?tag=cleaf_relstory_manual(1)
http://japan.cnet.com/sp/ebook/35029762/?tag=cleaf_relstory_manual(2)
http://japan.cnet.com/sp/ebook/35029912/?tag=cleaf_relstory_manual(3)
林 智彦(朝日新聞社デジタル本部)
2013/03/19 14:22(1) 03/21 15:21(2) 03/26 10:15(3)

海外の(電子)書籍をめぐる2つの「都市伝説」

 電子書籍について語る解説や評論には、くりかえし目にする「通説」がいくつかある。その中でも最もよく聞かれるのが、次の2つである。

 「日本の書籍流通のあり方は、世界の中で特殊であり、本の売り上げ不振の原因となっている。それがまた、電子書籍普及の障害にもなっている」。「米国、欧州とも電子書籍の価格を出版社が決める『エイジェンシー・モデル』は違法ということになった」。

 この2つの通説は、さまざまな形に姿を変えながら、日本の電子書籍に関する議論の前提となってしまっている。政府・民間の各種報告書でも、話の「枕」的に使われることが多い。

 しかし、実はこの2つとも、事実に反するのだ。今回は、誰もが事実だと思っているこの2つの「都市伝説」について、真実を明らかにしてみたい。

「委託販売」と「再販制度」

 議論の前提として、日本の書籍市場について簡単に説明しよう。日本の書籍市場については、2つのキータームで説明されることが多い。「委託販売」と「再販制度」だ。

 書籍の委託販売とは、小売店がメーカー(この場合は出版社)の代理となって商品を販売する契約のことで、小売店は売れ残りを一定期間後に返品できる。返品の期限によって、「新刊委託」(約100日後〜1年後など)、「長期委託」(4〜6カ月まで返品可能)、「常備寄託」(1年後まで返品可能)などがある。括弧内の条件は取次会社と出版社が交わす契約によって異なる。

 委託販売の対義語は「買切販売」で、日本でも岩波書店など一部の出版社は買い切りを原則にしており、通常の本は委託で出している出版社も、図鑑など、一部の商品を買い切りにすることもある。

 再販(売価格維持)制度とは、「メーカーが最終小売価格(再販価格=定価)を指定していい」とする制度のことだ。一般に、メーカーが小売価格を指定することは、独占禁止法違反とみなされるが、独禁法には適用を除外されている品目がいくつかあり、書籍もそれに含まれている。

 つまり日本ではメーカー(出版社)が定価を決めていい、とされているわけだ(ちなみに「定価を定めないのは違法」という誤解をよく目にするが、再販制度は「定価を定めた契約をしてよい」というもので、定価を定めない契約をしてももちろん合法である)。

 なお、委託販売は1908年に始まり、再販制度は1915年、岩波書店が業界内協定(紳士協定)として始めたのがルーツとされる。1952年には独占禁止法で正式に法制化された(以上は『日本雑誌協会 日本書籍出版協会50年史』Web版より)。

… ともあれ、筆者は2009年頃にこの件が話題となって以降、「パブリッシャーズ・ウィークリー」などの専門紙から、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど一般紙に至るまで、関連記事についてはそれなりの注意を持って観察してきた。それだけでなく、米国の出版界について書かれた書籍については、ここ数年内に刊行されたものに関しては、入手が容易なものはかなりの数、目を通したつもりだ。日本語の文献でこの件に触れたものは非常に少ないが、それについても目に付く範囲で読んだ。

これまでのところ、その中に「米国の書籍流通は買い切りである」と書かれたものをいっこうに発見できないでいる。それどころか、逆のことを示唆するものばかりが目につくのだ。

「書店は一般書仕入れにあたって、さまざまな条件付き(中略)にもせよ、出版社の発送伝票の日付けを基準にして四か月以降から一か年以内の範囲であれば、売れ残った本を出版社へ返品することは自由にできる」(金平聖之助『アメリカの出版・書店』44ページ)

365とはずがたり:2016/05/16(月) 19:51:32

「出版界にとって最大の悩み、難問のひとつである返本の対策として、一九八一年からハーコート・ブレス&ジョーバノヴィッチ(HBJ)社は、自社発行のハードカバーの卸について(中略)完全買切制への以降に踏み切り、出版界に大小さまざまな波紋を投げかけたのであった(中略)HBJ社の買切制導入以前の段階においても、二〇〇社余りの小規模の専門書出版社は、完全買切制を実施していたが、主要一般書出版社としては、HBJ社が第一号と言える(中略)だがHBJ社につづいて買切制を導入する出版社は皆無に近いまま、HBJ社も早々にして買切制を打ち切らざるを得なくなった」(同書48-49ページ)
 同書は1992年刊行なので、情報が古い可能性も考えられるが、最近の英語の文献をあたっても、次のような記述が見られるばかりだ。

「他のほとんどの産業と違って、出版産業は小売や卸売からの無制限の返品を受け付ける。実質的に、あらゆる本は委託で販売されているのだ。(Unlike most other industries, publishing allows unlimited returns from its retail and wholesale customers. In essence, every book sold is on consignment.)」
「出荷された月末から30日以内の支払いを約束するNet 30が、ほとんどの出版社の契約条件となっている。だが書籍では、実際の支払いは90日-120日後にしか実行されない。(Net 30, or payment within thirty days of the end of the month in which a book is shipped, is the norm that most publishers stipulate as their terms. In the book industry, though, most accounts actually pay in 90-120 days.)」 (以上は"Publishing for Profit" by Thomas Woll, 2010 AP通信は同書を「出版産業のバイブル」と称賛したとのこと)
「書籍は1930年代以降、返品可で販売されている。大恐慌のまっただ中、一部の出版社が書店に冒険するインセンティブを与えようと決意したのが始まりだ。われわれは、以来このイノベーションの影響下に置かれたままだ。 (Books have been sold on a returnable basis since the 1930s when, in the depths of the Depression, some of the major publishers decided to offer accounts an incentive to take greater up front risks. We have been living with the aftermath of this innovation ever since.」) 『"The Book Publisher's Handbook" by Eric Kampmann, 2007』
「書籍産業は返品という伝統において少し奇妙な業界だ。書店や取次は、売れなかった本を出版社に戻せば返金を受けられる。この慣習は、米国では19世紀半ばに導入されて以来、1930年代まで断続的に用いられ、サイモンシュスターが1943年、「ワン・ワールド」という本で完全返金保証をしたときに概ね制度化された。(The book industry is somewhat unique in its tradition of returns. Retailers and wholesalers are generally allowed to return unsold books to publishers for credit. )『"Reluctant Capitalist" by Laura J. Miller, 2012』
 関連文献で見る限り、この点では英国の出版界も基本的には同じ仕組みを採用している。主に英国の観点から出版界の基本を説いた『" Professional Guide to Publishing" by Gill Davies and Richard Balkwill, 2011』は、こう言う。

「出版における返品可の取引実態を初めて知ると、多くの人は驚く。出版社は小売業界のプライベート銀行のようだが、本当の銀行と違って、すばらしく儲けているわけではない」
 これなどは、方向性は異なるが、第1話でも触れたジャーナリストの佐々木俊尚氏のいう「ニセ金化」を彷彿とさせる表現である。

 少し前になるが、ブルームバーグによると、2008年、大手出版インプリントのハイペリオンの創設者が、やはり大手のハーパーコリンズに移り、買切制度を導入しようとした、という報道もある。しかし、同記事の中で、業界誌パブリッシャーズウィークリーの記者は、うまくいく望みは薄い、と示唆している。

 この記事で注目すべきは、以下の件であろう。

2005年の返本は4億6500万部、31%にものぼった(中略)(返品を許す販売の仕組みは)エネルギーの無駄遣いでしかないし、もっと悪いことに、本の作りすぎを促進する。結局その大部分は、ゴミ箱行きになる。

366とはずがたり:2016/05/16(月) 19:51:57
 「同じ委託販売といっても、米国のそれは短期、日本は長期、という違いがあるのではないか」とも考えられるが、各種資料を読むと、米国においても返品期限は契約によって異なり、かなり弾力的に運用されているらしい。

 例えば、2002年、コストコの平均陳列期間は6週間だった。(中略)モール内の書店の(中略)1990年代の典型的な陳列期間は3カ月から6カ月だった。スーパーストア(筆者注;1990年代に広まった郊外型の大型店舗)の同期間の平均値は6カ月から12カ月だった。独立系書店の陳列期間は当然、店によって大きく異なる。手っ取り早く売り上げを上げたい書店は短く、おすすめの本を細々と売りたい書店は何年も陳列する『Reluctant Caplitalists by Laura J. Miller』

通念に反して、米国やイギリスの書籍市場は、一種の「委託制度」を採用していることは間違いなさそうだ。

… ちなみに、返本率について述べておくと、年によって、書籍の種類によって違うが、日本ではすべての本の平均が約4割、米国ではハードカバーの返本率は約4割とされており、この点でも大きな違いはなさそうだ(米国の返品率は"Merchants of Culture" by John B. Thompson)。

「定価」も多数の国が採用

 「再販制度」や「定価」についてはどうだろうか?

 日本の出版業界の批判者の多くが、再販制度や定価に批判的であるが、前出のOECDのレポートは、次のような表を紹介している。

http://tohazugatali.we b.fc2.com/book/hayashi_oecd.png

この表は、OECD加盟国(50カ国)の全部をカバーしたものではない。しかし、対象の26カ国のうち実に18カ国が、なんらかの形で定価(Fixed Book Price)制度を採用している。OECDのレポートは、次のように説明している。

定価制度は、世界中の多数の先進国で、書籍産業が発達するのと並行して(普及した)。マスマーケットに向けた、より人気のある「ブロックバスター」を扱う書店や出版社が、高品質の、より文化的に価値のある本を脅かすのを防ぐため、書店団体と出版社団体の間で結ばれた業界協定によって、最低小売価格または「底値」が固定されたのが始まりである(46ページ)。

 ここにも見られるように、同じ「本の価格を固定する」制度といっても、すべての国が日本と同じような制度を導入しているわけではない。

 日本の再販制度は、法制化されたものだが、法律上の手当をせず(戦前の日本のように)業界内の協定で取り決めている国もある。また価格固定についても、売り出す価格そのものではなく、割引は許容しながらもその最低価格を定めたり、定価販売の期限を切る(時限再販)など、数値や時間に幅を持たせている場合がある。法制化されている場合でも、日本のようにそれ以外の契約ができる(つまり罰則はない)国と、フランスのように、違反者には罰金刑が課される国がある。

 しかし、いずれにしろ、本に「定価」を定めている国は、世界的にみて少ないわけではない、ということだけは言える。


これまで見てきたように、米国(そして英国)も、一種の委託販売制度を採用している。返本期限の長短などの違いはあるが、英米ともに返本の山に悩まされる関係者がいる。「商業主義の本ばかり売れる」「書店がどんどんつぶれている」などという悩みも、ほとんど同じである。参考書籍の中には、注文した書籍の支払いを遅らせる、日本でいう“延べ勘”や、そもそも支払いをしないで、全品を返本する書店の例などが挙げられていた。

 また「定価」についても、日本と同様に、固定価格制度を導入している国は多数あるのだ。



367とはずがたり:2016/05/16(月) 19:52:22
>>364-367

参考文献
Davies, Gill, and Richard Balkwill. The Professionals' Guide to Publishing : a Practical Introduction to Working in the Publishing Industry, Philadelphia : Kogan Page Limited, 2011.
Department of Justice. “USDOJ: Antitrust Division U.S. v. Apple, Inc., Hachette Book Group, Inc., Et Al..” Department of Justice. Accessed March 17, 2013.
Epstein, Jason. Book Business, W. W. Norton & Company, 2002.European Commission. “Case Search ? Competition - European Commission.” European Commission. Accessed March 17, 2013.
European Commission. “Case Search ? Competition - European Commission.” European Commission. Accessed March 17, 2013.
Greco, Albert N. The Book Publishing Industry, Boston : Allyn & Bacon, 1997.
Kampmann, Eric M. The Book Publisher's Handbook, Beaufort Books, 2007.
OECD. E-Books: Developments and Policy Considerations. Vol. 208, OECD, October 29, 2012. doi:10.1787/5k912zxg5svh-en.
Randall, Linda M. Reluctant Capitalists, Routledge, 2012.
Thompson, John B. Merchants of Culture, Polity, 2010.
Wilson, Britanie, and Jeremy Lucyk. A Very Brief History of the Book-Publishing Industry, Centennial College Press, 2012.
Woll, Thomas, and Dominique Raccah. Publishing for Profit : Successful Bottom-Line Management for Book Publishers, Chicago, Ill. : Chicago Review Press, 2010.
佐々木俊尚『電子書籍の衝撃』, ディスカヴァー・トゥエンティワン, 2010.
公正取引委員会. “書籍・雑誌の流通・取引慣行の現状.” 公正取引委員会, June 19, 2008.
山田順『出版・新聞絶望未来』, 東洋経済, 2012
岸博幸『アマゾン、アップルが日本を蝕む 電子書籍とネット帝国主義』Php研究所, 2011
服部有希“【フランス】 電子書籍の価格規制に関する法律.” 外国の立法, January 1, 2012.
服部有希 “フランスにおける電子書籍の価格規制―電子書籍と再販制度について―.” 外国の立法 no. 2012 (May 31, 2012): 1-11.
梶善登 “諸外国の書籍再販制度.” レファレンス (April 15, 2009): 1-25.


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