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Tohazugatali Book Review
296
:
名無しさん
:2015/08/23(日) 15:06:33
>>295
祖国とは何か
東山 「運命の糸」の証拠になるかはわかりませんが、僕は小さい頃から大人たちの話を聞くのが好きだったんです。周りになぜかホラ吹きの大人がたくさんいて……。
伊集院 ハハハ。いいね。
東山 彼らは何でもないことを、子どもがドキドキ、ワクワクするような語り方で話す。この小説を書いている間は、そういう人たちに少し近づけたような感覚を味わえて、すごく楽しかったです。
伊集院 私もあなたも移民の子だよね。だから書く小説に対して「彼らにしか書けない特別なものだ」と言われることがあるけど、それはけっこう面倒くさい。その作家の持っている将来性が、いつもそこへ帰依していってしまうと、作品がだんだん小さくなるんだ。
東山 そうですよね。
伊集院 国籍やルーツというのは、背中に貼られたシールのようなもので、剥がすわけにはいかない。だからといって利用するわけでもない。小説を書くときにも、この国に生まれ育った人たちよりも「覚悟」を決めなきゃいけない部分がある。出発が難儀であるぶん、覚悟ができる。そのことはいいことなんじゃないかと。
東山 はい。僕が中国の大学に留学したとき、校内新聞の取材を受けたことがあるんです。初の台湾籍の大学院生ということでいろいろとお話ししたんですが、結局、アイデンティティーの話になるんです。「自分をどこの国の人間だと思うか」「台湾は中国の一部か」と、モヤモヤしたところを突いてくる。それで結局、「彼が最終的に我々の祖国の意識に目覚めることを期待する」という感じでまとめられていて、すごく違和感がありました。
伊集院 私も韓国で取材を受けると、必ず「あなたの祖国はどこですか」と訊かれる。それに私は、「私に祖国はない」と答えているんだ。
東山 おお。
伊集院 父母の祖国が息子の祖国だとは限らないと。それでもしつこく訊かれると、「俺の祖国はギャンブル場だ!」と言うことにしている。
東山 ハハハ! 「祖国はない」という感じ、すごくわかります。僕は「台湾で生まれて日本で育った人間」としか言えない。国境で区切られた場所の中に限定できなくて。
伊集院 そういう人間が日本語で小説を書く意味というのも、私は考えましたね。それは、小説自体がしっかりしたものでないといけないという当たり前のことなんだけれども……。
でも、書くと覚悟を決めたとして、その背中に乗るものは、私は何でもいいと思っているんです。金がほしいとか、女にモテたいとか、カッコいい人生にしたいとか、むしろ理由がくだらなければくだらないほど、小説家に近づくんじゃないかと。小説はイデオロギーで書けるほど生易しいものじゃないし、やっぱり身体とか、その人が発する熱で書くものだと思うから。
東山 同感です。
伊集院 だから、選考委員だけじゃなく、既成の作家たちも『流』にそういうものを感じるんじゃないかと……というと褒め過ぎだけど、まあ、今くらいしか褒めるタイミングがないから(笑)。
東山 フフフフ。小説を書き始めたときのことはよく覚えているんです。'00年の12月、暮れも押し詰まった晩で、当時、次男が生まれたばかりなのに仕事がなく、博士論文が却下されて学位を取るのも絶望的な状況。にっちもさっちもいかない、これからどうするんだという夜、家族が寝静まってからパソコンを立ち上げて、プロットもなしに書き始めたんです。
伊集院 ほぉ。
東山 朝まで書いたら、パソコンがフリーズして全部消えた。嫌になるかと思ったら、推敲しながらもう一度書き始めていた。そのまま3ヵ月くらい書き続けて、最初の小説を仕上げました。
伊集院 それはすごいな。
東山 そのときも、書いていてすごく楽しかったんですよね。現実逃避だったと思うんですけど。
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