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市場・株・為替・経済変動・景気循環

1680とはずがたり:2018/08/14(火) 13:36:37

しかし、国際決済銀行(BIS)の統計を見る限り、そこまで懸念すべき事態なのかは判断がつかない。確かに、トルコの国内銀行が外国銀行に対して持つ対外債務の約6割がスペイン・フランス・イタリアによって占められていることから、市場が「トルコ発、スペイン・フランス・イタリア経由、ユーロ圏行き」といった危機の波及経路を心配することも一理ある。このところのトルコリラ急落を踏まえれば、外貨で借り入れている債務の為替ヘッジが進んでおらず債務不履行に陥る部分が出てくる可能性は確かにある。

とはいえ、トルコにとって欧州が重要な債権者であるからと言って、欧州にとってトルコが同じくらい重要な債務者であるとは限らない。例えば、国際与信残高(国外向けの与信残高)を見ると、スペインは約1.8兆ドル、フランスは約3.8兆ドル、イタリアは0.9兆ドルである。ちなみに、ドイツは約2兆ドルだ。

ここで、それらユーロ圏4大国の国際与信残高合計に占めるトルコ向け与信残高の割合を計算してみると、2%にも満たないことが分かる。国別に見てもスペインの4.5%が最大であり、トルコショックがそのまま欧州金融システムを揺るがすような話になるとは考えにくい。

<「難民」を巡る大きな借り>

だが、問題がないわけではない。というのも、欧州連合(EU)はトルコに対して大きな借りがある。2015年に勃発し「債務危機を超える危機」とも言われる欧州難民危機は今も根本的な解決には至っておらず、正確には解決のめどすら立っていない。だが、その一方で大きな混乱も招いていない。

これはなぜなのか。ひとえにEUとの合意に従ってトルコが難民をせき止めているからである。EUに流入する難民の多くは内戦激化により祖国を飛び出したシリア人であり、トルコ経由でギリシャにこぎ着けてEUに入るというバルカン半島を経るルートを利用していた。ゆえに、EUとしては何とか経由地であるトルコの協力を得て流入をせき止める必要があった。


2016年3月18日、ドイツが主導する格好でトルコとの間で成立した「EU・トルコ合意」は非常にラフに言えば、「カネをやるから難民を引き取ってくれ」という趣旨の危うい合意だが、効果はてきめんだった。少なくとも、その合意がEU(とりわけドイツ)に余裕を与えているのは紛れもない事実である。
>>1679
<欧州政治安定の鍵はエルドアン政権の手中に>

これは裏を返せば、難民危機はトルコひいてはエルドアン政権次第ということである。ここに至るまでの大統領の言動を見る限り、今後、意図的に難民管理をずさんなものにするリスクはないとは言えまい。

いや、故意ではなくともトルコの政治・経済自体が混乱を極めれば難民を管理しきれないという過失も考えられる。どちらにせよトルコがいつまでも欧州のために難民をせき止めてくれる保証はない。

率直に言って、EU域内に難民流入が再開するのは非常にまずい。そうなった場合、難民流入に不平不満を抱えるイタリアのポピュリスト政権が勢いづくだろう。ただでさえそれを切り札として欧州委員会と交渉する雰囲気があるのだから、事態はより複雑になるはずだ。

また、10月にバイエルン州選挙を控えるメルケル独政権も難渋するだろう。難民受け入れのあり方を巡って長年の姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)がメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と仲たがいを起こしたことが6月に話題になったばかりだ。ここで状況が悪化したら余計に両者の溝が埋め難くなろう。

さらに2019年5月には欧州議会選挙もある。EU懐疑的な会派をこれ以上躍進させないためにも難民を巡る状況はやはり悪化させるわけにはいかない。

金融市場ではトルコの国内金融システム混乱がユーロ圏に波及する経路が不安視されているが、現実的にはエルドアン政権が欧州難民危機ひいてはEU政治安定の生殺与奪を握っている事実の方がより大きな脅威であるように思われる。


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