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国際政治・世界事情
5572
:
チバQ
:2013/01/07(月) 23:30:58
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2013010302000143.html
国境 交錯の現場 (2)中国・ミャンマー 対岸の「同胞」に支援の手
2013年1月3日 朝刊
中国語を学ぶカチン族の小学生たち=ミャンマー北部カチン州の難民キャンプで
「タイヤン(太陽)、タイヤン…」
トタン屋根しかない吹きさらしの教室に子どもたちの元気な声が響く。ミャンマー北部カチン州の難民キャンプで、中国人の男性ボランティアがカチン族の少年少女に中国語を教えていた。
山あいにあるキャンプはほとんどが竹造りのバラック。わきを流れる小川の向こう岸は、中国雲南省の西端、徳宏タイ族ジンポー族自治州だ。
両国をまたいで居住するカチン族は中国でジンポー族と呼ばれる。同自治州に住むジンポー族の女性(48)は難民支援でたびたびキャンプを訪れるが、近くの橋の国境ゲートでは係員が通行人の顔を見るだけ。「中国の兵士さえいなければ(出入境証の無い不法越境を)見逃してもらえる」
二〇一一年六月、カチン州では少数民族の武装勢力「カチン独立軍(KIA)」とミャンマー政府軍の間で内戦が勃発。戦闘を逃れカチン州と雲南省との国境付近で避難生活を送る難民は約六万人といわれ、このキャンプには数十キロ圏内からの七千人以上が暮らす。もともと成年男性の多くは兵士に駆り出されており、住民の三分の一が未成年。山間部の大半はKIAの支配地域だけに、時折、銃を背負った兵士が行き交う。
キャンプ内の市場では難民が栽培した野菜のほか、中国製やタイ製の日用品も並ぶ。ただ、国連などからの支援はままならず、「何とかコメだけは食べられる状態」とキャンプを運営するノ・オンさん(39)。KIAは、国外からの支援物資の輸送を政府が妨害していると非難する。
ミャンマーのテイン・セイン政権は、欧米諸国との関係改善を図るため民主化政策を進め、昨年十一月には現職の米大統領として初めてオバマ氏を迎え入れた。だが、キャンプ周辺にはまだ欧米製品が入り込んでいる様子はない。
難民の中には、中国の親戚や知人を頼って越境する人も少なくない。ただ、中国政府は「情勢が落ち着けば彼らはミャンマーへ戻る」(中国外務省)と主張。福祉や教育を受ける権利のある難民として認めていない。
中国は、欧米諸国がミャンマーに厳しい経済制裁を科していた間も、石油・天然ガスのパイプライン建設を進めるなどミャンマーを重要な戦略パートナーと位置付ける。このため「中国は経済発展して強国になったものの、ミャンマー政府に気兼ねして何もしてくれない」とノ・オンさん。キャンプが内戦に巻き込まれる危険に備え、いざという時に対岸の中国へ逃れるため小川に置いた飛び石を中国の兵士に撤去された、と憤る。
二つの国家のはざまで少数民族を支えるのは、「民族」や「宗教」の絆だ。
カチン州は十九世紀末にプロテスタントが伝わり、住民にはキリスト教徒が多い。このため国内外のキリスト教徒が支援活動を続けており、ジンポー族の女性もその一人だ。中央政府から抑圧され、しかも国境で分断されて孤立してきた同胞たち。「同じキリスト教徒と思えば国境は関係ない」。女性は自分に言い聞かせるように語った。
(カチン州の難民キャンプで、新貝憲弘、写真も)
<中国・ミャンマー関係> ミャンマーの国軍関連企業と中国企業が2012年3月からミャンマー中部モンユワで始めた銅鉱山開発が、地元の反対で暗礁に乗り上げている。住民や僧侶らと警官隊との衝突を受け、ミャンマー政府は12月、最大野党党首アウン・サン・スー・チー氏をトップに調査委員会を設置。開発中止の可能性が浮上した。北部カチン州で中国企業が進めていたダム建設も工事は中断。資源・エネルギー面で協力してきた両国関係は曲がり角に来ている。
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