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国際政治・世界事情
3366
:
チバQ
:2011/11/10(木) 12:10:30
http://mainichi.jp/select/world/archive/news/2011/11/10/20111110ddm007030008000c.html
ナゴルノカラバフ紛争:停戦17年 クラスター、地雷禍なお 撤去作業、資金の壁
クラスター爆弾の不発弾を探索する「ヘイロートラスト」の職員たち=ナゴルノカラバフ自治州ステパナケルト近郊で10月28日 旧ソ連末期にアゼルバイジャン共和国(当時)とアルメニア系住民が衝突した「ナゴルノカラバフ紛争」で、大量のクラスター爆弾や地雷が使われた。94年の停戦から17年がたったが、残された兵器が住民を傷つける事故が後を絶たず、紛争の傷痕は消えていない。【ステパナケルトで大前仁】
霧が立ちこめる谷あいで、地雷探知機を手にした作業チームが慎重に草をかきわけながら、ゆっくりと進んでいた。アゼルバイジャンからの独立を宣言した「ナゴルノカラバフ共和国」の「首都」ステパナケルト近郊の村落。作業を始めてから2カ月で、クラスター爆弾の不発弾26発が発見されたという。地雷撤去にあたる非政府組織(NGO)「ヘイロートラスト」(本部・英国)の現地職員アルカディさん(39)は「長い間、多くの不発弾が残されていたと思うと怖くなる」と話した。
ナゴルノカラバフでは88年、人口の8割を占めたアルメニア系住民がアゼルバイジャン当局と衝突し、隣国アルメニアが介入する大規模な紛争に発展した。村で見つかったクラスター弾は、アゼルバイジャン軍が投下したものとみられる。ヘイロートラストによると、94年の停戦合意後も「共和国」内でクラスター爆弾の不発弾や地雷による事故262件が発生し、340人が死傷している。
ステパナケルトに住む小学4年生のマラ君(10)は今年6月、自宅から約1キロの廃虚跡で遊んでいた時、全長20センチ程度の筒状の鉄片を見つけた。これまでも鉄くずを拾い集めて小遣い代わりにしていたマラ君は、火中で溶解させて鉄だけを取り出そうと考え、近くの暖炉へ拾った物を放り込んだ。
「ボン」。直後に爆発が起こり、マラ君の右手の指から血が流れ出した。そばにいた姉のマリーナさん(12)も足にけがをした。幸い姉弟は軽傷で済んだが、マラ君は鉄くず拾いに手を出さなくなった。父のユーラさん(36)は「少しの時間でも2人の姿が見えなくなると不安になる」と打ち明けた。
ナゴルノカラバフで00年に撤去作業を始めたヘイロートラストは、地雷が敷設されたと推定される地域の89%、クラスター爆弾などが使われたと思われる地域の70%で撤去作業を終えたという。「それでも難しい作業が残されている」と、撤去プログラム責任者のスマートさん(37)は話す。そもそも地雷は敵に発見されないように敷設されているから、発見は容易でない。また軍が駐留する停戦ライン付近では、作業を認められていない。
さらにナゴルノカラバフ特有の事情が、撤去作業の継続を難しくしている一面もある。
ソ連時代のナゴルノカラバフ自治州は、アルメニア共和国に隣接していない「飛び地」となっていた。しかし独立を宣言した「共和国」側は、紛争時に周辺地域に進軍し、約7600平方キロにのぼるアゼルバイジャン領を「占領地域」として実効支配し、アルメニアとの回廊を確保した。「共和国」住民の間では「国の安全を確保するためにも『占領地域』を返すべきではない」(野党「アルメニア革命連盟」のサルキシャン代表)という強硬論が大勢を占めている。
このため、ヘイロートラストへ活動資金を提供している支援団体の中には、資金の使い道を「もともとのナゴルノカラバフ自治州領内の撤去作業に限定する」よう特定している組織があるという。ヘイロートラストは現在、米国の慈善団体からの支援金を使って「占領地域」での撤去作業を実施しているが、この資金が12月末で打ち切りとなる。スマートさんは「新たな資金の提供先を見つけなければ、『占領地域』での撤去作業を続けられなくなる」と頭を抱えている。
毎日新聞 2011年11月10日 東京朝刊
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