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国際政治・世界事情
2688
:
チバQ
:2011/06/20(月) 18:48:51
http://mainichi.jp/select/world/news/20110617ddm007030163000c.html
遠い春:揺るがぬイラン/上 人権活動家、暴力の犠牲に
◇民兵100万人、デモ封じ
6月1日早朝、テヘラン郊外の住宅地に、バシジと呼ばれる保守派の屈強な民兵や警官ら数百人が集結した。前日病死した、著名な人権派野党政治家、エザトラ・サハビ氏(81)の葬儀だった。
混乱は突然起きた。集まった男たちがエザトラ氏の遺体を奪い取り、抵抗した長女で人権活動家のハーレ・サハビ氏(54)が、男にわき腹を殴られ即死したのだ。政府は「ハーレ氏の死は持病悪化が原因」と発表したが、葬列が反政府デモに発展するのを警戒した保守派ともみ合ったことが原因とみられ、国内で批判が高まっている。
イランでは09年6月、保守派のアフマディネジャド大統領が大差で再選したとする開票結果に疑問の声があがり、改革派による反政府デモが拡大した。
ハーレ氏は連日デモに参加し同年8月に逮捕され、禁錮2年の刑で服役中だった。父親の葬儀のため一時釈放されていたのだ。判決前の昨年5月、ハーレ氏は毎日新聞の取材に実名で応じ「自由に意見が言えるイスラム社会が欲しいだけです」と語っていたが暴力の前に命を落とした。
父のエザトラ氏は、イスラム革命(79年)前、当時のパーレビ王制を批判して投獄された。故ホメイニ師の指導で革命が達成されると閣僚にもなったが、革命後の権威的体制に反発して再び投獄された。革命で体制は変わっても強権体質が不変なことを、父子2代が体現している。
「アラブの春」を受けテヘランでは今年2、3月にも「反政府デモ」が散発したが即座に鎮圧された。アラブ諸国との違いは治安部隊の圧倒的規模だ。警察や軍、革命防衛隊に加え、全国約100万人のバシジの存在は強力だ。「人々は治安部隊におびえ、無言でばらばらに歩くしかなかった」(40代男性)。米メディアは「数万人のデモ」と報じたが、デモ集団を形成することすら難しかったのが現実だ。
弾圧はデモだけでなく言論に対しても進む。反政府的な記事を書いたとして逮捕され、1カ月間独房に入れられた女性記者は語る。「記者仲間が次々とペンを捨て海外に出て行く。表面上平静な今こそ言論の危機です」
今年1月、エジプトで起きた民主化デモでは、一時鎮圧に乗り出した警察が結局撤収し、軍も事態を静観した。そしてデモは連日拡大しムバラク政権崩壊へとつながった。一方、イランの場合、治安当局は反抗の「芽」を徹底的につぶし、国内外の批判は気にしない。
改革派の人々は口をそろえる。「この国の指導部は革命を経験したプロばかり。革命の怖さも抑え方も知り尽くしている」
× ×
チュニジアの政権崩壊から始まった「アラブの春」。リビアやシリアなど周辺諸国が揺れる中、イランでは春の風が吹かない。その背景を探る。【テヘラン鵜塚健】
毎日新聞 2011年6月17日 東京朝刊
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