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国際政治・世界事情
1998
:
チバQ
:2011/02/02(水) 22:31:30
http://www.asahi.com/special/meastdemo/TKY201102010593.html
カイロ行進、盛り上がれない コプト教徒の町・死者の町2011年2月2日0時50分
【カイロ=北川学、玉川透】エジプトの野党勢力が呼びかけた「100万人行進」で沸いた1日の首都カイロ。その騒がしさをよそに、少数派のコプト教徒や、極貧層が暮らす「死者の町」は静まりかえっていた。30年にわたるムバラク大統領の在任中、ひっそりと暮らしてきた人々は、固唾(かたず)をのんで政変の行方を見守っていた。
■コプトの町
カイロの下町、ショブラ地区。原始キリスト教の名残を伝えるコプト教の中心地は異様な静けさに包まれた。
我々にはデモではなく、時間が必要だ――。前日の1月31日、地元の若者たちが、デモへの参加自制を呼びかけるビラを同地区にまいた。28日のデモに参加したコプト教徒が多数負傷、略奪や放火が横行し、ゼネストで銀行や病院などが閉鎖するなど人びとの暮らしを脅かしたことに憤りを感じたからだという。
コプト教徒の警備員レダさん(36)もビラを読んで、デモ参加を見送った。「ムバラク政権は打倒すべきだが、平和的に問題を解決してこそ、真の革命だ。政府も、秋の大統領選までに何らかの変化を打ち出すだろう。それまで見守りたい」と話す。
同地区の教会関係者も「教会が指示したわけではないが、住民同士の連帯が強いためデモに参加する人はほとんどないだろう」と言う。
民衆デモが起きた当初、十分な安全を確保してくれない治安・警察当局に対するコプト教徒の不満が、野党系のイスラム教徒や民主化を求める市民と結びつき、政権打倒の一翼を担うと期待された。
だが、ムバラク政権が倒れれば、最大野党勢力のムスリム同胞団などイスラム勢力が政治の中心に躍り出る可能性が高まる。そうなれば、少数派のコプト教徒は、新たな試練に直面する――。そんなジレンマが、彼らに慎重な姿勢を余儀なくさせている。
60代のコプト教徒の男性は「ムスリム同胞団は信用できない。彼らが政権に就いて生活がむちゃくちゃになるぐらいなら、ムバラク政権のままの方がマシだ」と漏らす。
コプト教徒の元軍人ファイズさん(60)も「イスラム教徒とは今もうまくやっている。急ぎすぎては何も良いことはない」と話した。
■死者の町
路上に放置された生ゴミが異臭を放ち、野良犬がうろつく。カイロ東部イマーム・シャファイ地区は、市内で最も貧しい場所のひとつだ。50万人もの住民が、13世紀以降に造られた墓地に暮らす。別名「死者の町」とも呼ばれる。
「何しに来たんだ!」。自警団を組織して道路を封鎖していた10人ほどの若者が、鋭い目つきで記者が乗った車をにらみつけた。ナイフや刀を持った者もいる。
無職レファトさん(50)の「家」を訪ねた。外壁の扉を開けると、中庭の奥に大理石の墓石が11基あった。墓地の所有者に頼まれ、25年前から墓守をしながら暮らす。
扉の脇にある3畳ほどの部屋の壁に、ジャンパーが2枚掛けてある。電気、ガス、水道はなく、唯一の家電製品の14型テレビは、拾ってきた車用のバッテリーで見る。
12年前に足の手術が失敗し、石工職人の仕事ができなくなった。松葉づえが手放せず、社会保障省から支給される月額70エジプトポンド(約975円)の年金が頼りだ。「独身だから何とか食えるけど、年をとったら不安。政府には増額をお願いしたい。もしも体が丈夫ならデモに駆けつけるのだが……」
反政府デモが始まったのは1月25日。地区ではこれまで一度も抗議活動は起きていない。無職アフマドさん(55)は、「みんな日々を生きるだけで精いっぱい。ムバラク政権は貧困対策を何もしなかったが、我々にはデモに行く余裕もないんだよ」と嘆いた。
◇
〈エジプトのコプト教徒〉コプト教は、紀元1世紀ごろからエジプトで独自の教義を発展させた東方教会系のキリスト教の一派。信者はエジプト人口(約8千万人)の約1割を占めるとされる。豚肉食や飲酒が許され、菜食だけが認められる断食などイスラム教徒とは異なる生活習慣を持つ。エジプト国民の大半を占めるイスラム教徒との間には教義の違いや少数派の権利などをめぐり潜在的なあつれきがあり、散発的な衝突が続いてきた。
2000年1月には、南部の町で焼き打ちなどがありコプト教徒約20人が死亡。昨年1月には、コプト教徒を狙った銃の乱射事件で7人が死亡。今年1月1日には北部アレクサンドリアのコプト教会前で自爆テロがあり、20人以上が犠牲になった。
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