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国際政治・世界事情

1780チバQ:2010/12/18(土) 00:12:13
私は、すぐに指示を出した。
「12月16日正午、日本大使館に、緊急対策本部を立ち上げる。」
対策本部長は、私である。そして改めて、在留邦人全員の安否を確認するようにした。
「全員の安全を確認しました。」
と、しばらくしてから連絡が来た。これからは、情報や経過を、小まめに東京の本省に伝える。

携帯電話はまだ妨害されていない。しかし、ケーブルテレビは切られてしまった。だから、フランス24、CNN、BBCからの情報は遮断された。それで、フランスの日本大使館と連絡し、パリで手に入る情報を逐一送ってもらうようにした。騒乱などの大事件の時には、現場よりも遠隔地の方が、報道を通じて、何が起こっているのかをより良く把握できることが多い。海外メディアの情報は、とても重要だ。

銃声や砲撃の音は、1時間ほど激しく続いた。静かになったかなと思ったら、また激しく再開する。それも、比較的近かったり、ずいぶん遠方だったりする。午後1時くらいになって、銃声は散発的になった。そして、やがてぱったりと止んだ。戦闘の決着がついたのか、双方が引き下がったのか。でも、公邸で閉じこもっている限りでは、何がどうなったのか一切分らない。ソロ首相と一緒に「行進」に参加しているはずの、私の知り合いの政治家たちは、いったい今頃どうなっているのだろうか。携帯電話をかけても繋がらない。心配である。

まだ分らないことだらけであるけれど、ひとつ明らかなのは、ソロ首相の「行進」は、私の公邸の前に現れなかった、ということだ。ソロ首相は、ゴルフホテルからの道路を、ここまで辿り付けなかった。そして、国営テレビは、1時のニュースを始めた。相変わらずバグボ政権の話ばかりしている。人々の「行進」が、国営放送局に乗り込むという目的を達成していないことも、また明らかだ。1時のニュースの最後に、国営放送局の局長が、建物の庭で皆と握手しているような映像が続けて流された。ソロ首相の「行進」はうまくいかなかったのだ、ということを、殊更に宣伝しているようである。

いったいぜんたい、国営放送局まで歩いて行って、建物を乗っ取るなどという計画が、うまくいくとは始めから思えなかった。その「行進」を、ソロ首相がなぜ強行したのか。その目的や意図は分らない。アビジャンの各地で、「行進」に参加しようとした人々のなかから、十数人といった規模で、死者が出たということは確からしい。また、コートジボワールの北部と南部の境界地域あたりで、北部の「新勢力」軍と、南部のバグボ政権の軍とが、交戦をしたらしい、という情報も伝えられている。アビジャンでの「行進」だけでなく、何か大がかりなものが、コートジボワールの国全体で動いているのだろうか。とにかく情報を集めて、何が起こっているのかを、できるだけ正確に把握しよう。そして、危険の度合いを正しく判断して、どういう対策をとるべきかを、決めていかなければならない。

まことに騒がしく不安な一日であった。日が落ちて夕闇が訪れつつある。もう銃声も騒ぎ声も聞こえない。前の道路には、いまだに一台の車も走らない。誰もが声を潜めている。普段よりはるかに静かな、一日の終わりを迎えている。


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