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文部スレ
3138
:
とはずがたり
:2016/12/22(木) 20:19:18
>>3137-3138
大隅君と接したことのある人達はお分かりのように、彼はおおらかでおだやかな性格であり、研究室には世界最先端のことをやっているといったピリピリした雰囲気はまったくありませんでした。酒は大好きなので、飲みすぎてひっくり返りけがをしたこともありました。現在の東工大の研究室もほのぼのとしているようで、世間的に偉くなってもまったく変わっていないようです。所長の私から見ても、研究には緻密ですが、そのほかのことには大まかなところもありました。昆虫少年であった彼に九州での蝶のようすを訊いたこともあります。要するにふつうの隣(の研究室)のおじさんでした(ただし世間の人から見れば研究者はみな変わり者です)。でももちろんそれでノーベル賞にたどりつけるわけではありません。自分の見つけた面白そうなことに集中して、セレンディピティ(とは調べ→serendipityは予想外の発見とのこと)にも恵まれ、こつこつと追及してきた結果が受賞につながったことは言うまでもありません。
1997年には彼の主催で、基生研で世界ではじめてのオートファジーに関する国際シンポジウムが開かれています。過去の基生研での国際シンポジウムは海外の最新知識を吸収するのに大いに貢献してきたのですが、この年はむしろ海外の研究者たちに大きなインパクトを与えることになりました。
私が岡崎を去ってからも、彼および大隅研の仕事はますます発展し、藤原賞を受賞したころには私はノーベル賞の受賞を予感しました。それで大きな賞を取るたびにまだこれで終わりではないと言い続けてきました。これまでのわが国の生理学・医学賞受賞者は利根川進氏が化学、山中伸弥氏が医学、大村智氏が薬学の出身であり、基礎研究という点からも生物学という点からも、彼の受賞が待望されました。昨年は大きな賞の受賞が相次ぎ、日程の点で天皇・皇后両陛下が臨席される国際生物学賞の授賞式とノーベル賞関係の行事の重なりが懸念される有様でした。今回の単独受賞ほんとうにすばらしい!
大隅君はインタビューで、基礎研究の重要性を訴え、現状を憂い、そして一億に近い賞金をあげて若手を育てるために役立てたいとコメントしています。それに対してマスコミや首相は応用面のことにしか触れず、文科相は競争的資金の増額というような見当はずれの弁、科学技術担当相に至っては社会に役立つかどうかわからないものにまで金を出す余裕はないという始末です。なげかわしい。これでは科学・技術立国など成り立つはずがありません。それにもめげず、より多くの若い人たちが大隅君の受賞に刺激されて、すぐに役立つわけではない基礎研究に、そしてどちらかというとこれまで恵まれてこなかった生物学(生命科学)の研究に進んでくれるようになることを大いに期待したいと思います。いましばらくは機会がないでしょうが、彼をまじえながら昔の仲間たちとゆっくり杯を交わすことができるようになれば幸いです。
(元基礎生物学研究所長・元岡崎国立共同研究機構長 毛利秀雄)
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