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労働運動

756とはずがたり:2013/10/12(土) 20:14:51
>>754-756
裁量労働制の拡大で
多様な働き方の実現を

残業割増率を引き上げるための前回の労働基準法改正が、週60時間以上に限定という中途半端な結果に終わったのは、経営側が同時に求めていた裁量労働制の拡大(いわゆるホワイトカラー・エグゼンプション)が実現しなかったこともある。現行の裁量労働制は、単に1日に8時間働いたと見なすだけのもので、深夜・休日には、割増賃金を受け取らなければならない。平日に休んで休日に働くということが、自由にできない仕組みとなっており、多様な働き方を必要とする現場でのニーズとかい離している。

他方で、経営側にとっては、労働者の裁量で深夜・休日労働を自由に決められる一部の職種を放置したままで、単に残業割増率を倍にはできない。このため、「部下のいない管理職」のように、実際の労働時間数や働いた曜日にかかわらず、定額の残業手当を受け取る仕組みが考案された。

もっとも、定額残業代の制度が導入されれば、労働者は際限なく働かさせられ、過労死が増えるという批判があった。それに対して、新しい裁量労働制の対象者については、年間104日(週休2日制に相当)の「強制休暇」を使用者に義務付けという安全弁がセットとなっていたことが、ほとんど知られていない。

現行法では、労使間の合意に基づく三六協定さえ届け出れば、妊婦等の一部例外を除き、時間外労働の総量を制約する法律はない。いわば所定の割り増し賃金さえ払えば、企業は際限なく労働者を働かせることができる。その意味では、この「残業代ゼロ法案」という誤ったレッテルを張られて幻となった法律案は、一部の労働者に限定したものとは言え、日本に初めて「強制休暇」という概念を労働法に導入した画期的なものであり、いわば「過労死防止法案」といえる。

これは締め切りのある業務のために徹夜した場合、それが終わってから、すぐ次の仕事を始めるのではなく、その前に必ず一定の休暇を取得させることを義務付ける制度であるからだ。この適用対象となる労働者を、中小企業の経営者に配慮して広げ過ぎたことが批判を受けた主因であり、専門性の高い職種に加えて、例えば年収800万円以上等、厳格に絞り込む必要がある。この強制休暇法案が実現すれば、事実上、労働時間あたりの賃金率が高まり、消費需要も増えるであろう。

ドイツ経済を復活させた
シュレイダー改革に学ぶべき

労働市場の構造改革といえば、すぐに「アメリカ型の労働市場を目指すもの」という批判を受ける。しかし、日本の労働法制のお手本である欧州でも、着実に改革が進んでいる。その転機となったものは、ドイツの現在のメルケル首相の前任者であったシュレイダー首相が行った労働市場改革であった。これは際限なく受給できた失業給付に就業訓練を義務付けることや、雇用安定機関(日本の公共職業安定所)を民間の人材サービスとの競争に晒す等の改革である。

また、残業時間を割り増し賃金で受け取るのではなく、貯めておき、有給休暇としてまとめて取得する「労働時間貯蓄口座」を欧州ではじめて導入するなど、画期的な内容となっていた。これは残業が必要な場合に、カネではなく、後の休暇増という労働時間の交換であり、日本と異なり有給休暇が完全消化されているドイツでは、労使双方にとって望ましい面もある。こうした労働市場改革が、その後の欧州経済に占めるドイツ経済の復活のひとつの要因となったことは、安倍総理の経済成長戦略にも大きな意味をもつものといえる。

労働時間に囚われず働ける一部の労働者を除き、一般労働者には残業割増率の倍増と未消化分の有給休暇の買い上げという形で、実質的な賃上げを実現する。これが諸外国と比べて低いコストで慢性的な長時間労働を強いられている労働者の待遇を改善し、世界標準の働き方に近づける道でもある。この結果、労働者にとっては、実質的な賃上げか、労働時間の削減かのいずれかが実現することになる。政府が賃上げによる内需拡大を本気に考えるのなら、既存の労働市場規制の改革が不可欠といえる。


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