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労働運動

1392とはずがたり:2017/01/26(木) 15:22:50
>>1390-1392
 企業がこのように長期雇用を保証するということは、不況期に指名解雇ができないということであり、企業がその分の賃金コストを負い続けければならないことを意味する。企業というのは利潤を最大化しようとする存在であるから、本来であればそのようなリスクは負いたくないと考えるはずである。にもかかわらず、日本の企業が高度経済成長期にそのリスクを負う選択をしたというのは、それだけその時代の人手不足が深刻だったということである。そして、その「不況でも社員の首は切らない」という選択は、不況といっても少し我慢すれば過ぎていく程度のものであれば、確かに正しかったのである。

 ところがそこに、これまでに日本が経験したこともない長期不況がやってきた。それが、バブル崩壊後の1990年代以降の「長期デフレ不況」である。不況が長引けば、企業が終身雇用制度を維持するコストは累積的に増加していく。そこで企業は、「年功序列から成果主義へ」といった名目で正社員の賃金を切り下げるとともに、賃金コストの高い正規から、賃金コストがはるかに低い非正規への雇用代替を行い始めた。それは、労働市場がもはや高度成長期のような売り手市場(=人手不足)ではなく、完全に買い手市場(=雇用機会不足)に転じていた中では、企業にとって必然的な対応でもあった。若年層の経済格差は、その帰結であった。

人手不足こそが重要
 要するに、重要なのは「制度」よりもむしろ「マクロ経済状況」である。景況が改善し、労働市場で労働需要が拡大し、売り手市場化するのでなければ、いくら制度改革を行ったところで、結局は焼け石に水である。

 その典型的な実例の一つは、雇用格差の原因として規制緩和反対派から槍玉に挙げられることの多い、派遣労働の規制緩和である。この政策は本来、長期不況の中での失業拡大に対応して、企業に雇用拡大を促すことを目的としていた。そして、それは確かに、当初のもくろみ通り、「派遣労働者の拡大」をもたらした。彼ら派遣労働者は、もし派遣として職が得られなければ雇用されず失業していた可能性が高いのだから、この政策は確かにその目的を達成していたのである。しかし皮肉にも、その政策は後に、その成功ゆえにこそ、日本の雇用格差の元凶として批判されることになった。

 この実例は、雇用状況の改善のために何よりも重要なのは、「人手不足にすること」であり、それがない限り、雇用機会不足のしわ寄せが必ずどこかに現れることを示している。逆に、労働市場が売り手市場になれば、高度経済成長期がまさにそうであったように、企業は自ずと労働者の雇用条件を改善していかざるを得なくなる。つまり、従業員の雇用を保証し、待遇を改善し、賃金を引き上げていくしかない。それができない企業は、もはや働き手を集めることができないため、市場から淘汰されていく。いわゆる人手不足倒産である。そこで真っ先に淘汰されるのは、もっぱら長時間・低賃金の労働搾取によって利益を上げているような、いわゆるブラック企業であろう。それが過去のものになりつつある兆候は、現状で既に見られる。

 これは、ブラックではない通常の企業にとっても、雇用政策の一大転換を要する、きわめて容易ならざる状況である。しかし、それは同時に、一般の労働者とりわけ若年層にとっては、これまで悪化する一方だった賃金を含む雇用条件が、将来的に着実に改善していくであろうことを意味している。そしてそれは、日本の失業率がさらに低下して完全雇用に近づき、デフレが克服されてマイルドなインフレが定着すれば、自ずと実現される将来なのである。


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