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労働運動

1029とはずがたり:2015/12/14(月) 11:28:12
>>1028-1029
 その講演内容から浮かび上がったのは、ドイツもまた貧困問題に直面しているという現実だった。

 ドイツは、労働協約を尊重する「協約自治」の国だ。産業別・業種別に作られた経営者団体と労働組合が、労働協約を結ぶことで賃金や労働時間などの労働条件を決めるのだが、そうして決まったルールは企業を越えて適用されるという伝統がある。労働協約が、法律と同じかそれ以上の価値を持つのだ。

 ヴァルターマン教授によると、こうした背景によって、最低賃金制度は長年、導入が見送られてきた。つまり、政府が法律に基づいて決める最低賃金は、協約自治への不当な介入に当たるとみなされてきたわけだ。当初は経営側だけでなく、労働側も制度創設への反対意見が根強かったという。

 それでもドイツが今年1月に導入せざるを得なかったのは、低賃金で働く労働者が増えてきたためだ。特にサービス業など非正規労働者の多い業界で、労働組合が経営者団体に押し込まれるようになり、協約自治が機能不全に陥ったのだという。

 ヴァルターマン教授は最低賃金制度が必要だと考える立場だが、着目するのは、低賃金が現在の貧困だけでなく、将来受け取れる公的年金の額にも影響してしまう点だ。教授の試算によると、ドイツでは老齢基礎保障に当たる月額722ユーロ(約9万5千円)を受給するためには、時給9・4ユーロ(1237円)で週40時間、45年間働き続けねばならないという。

 ただ、ドイツでは想定外の事態も起きている。内戦が続き、過激組織「イスラム国」が台頭したシリアからの難民問題だ。現行法に従うと、難民が職を得た場合も最低賃金は同じように適用される。

 経営側からは、早くも難民への最低賃金制度の適用を見送るべきだとの声が上がっているというが、ヴァルターマン教授は取材に対し「現段階では難民がどういう形でドイツ社会に統合されるか分からない。最低賃金制度に例外を設けることは、時期尚早だと思う」と話した。

民主党のお株を奪った安倍政権

 最後に日本の状況をみてみよう。

 政府が11月26日に決定した「1億総活躍」の緊急対策には、最低賃金を年3%程度引き上げ、将来的に全国平均で千円に引き上げることが盛り込まれた。「新三本の矢」のひとつ、国内総生産(GDP)600兆円の達成に向けた施策だ。

 日本の最低賃金は、都道府県ごとに異なる。今年度の場合、最高は東京の907円、最低は鳥取、高知、宮崎、沖縄の693円。関西圏は大阪858円、京都807円、兵庫794円、滋賀764円、奈良740円、和歌山731円で、全国平均は798円となっている。

 仮に年3%ずつ上昇していくと、全国平均では8年後の平成35(2023)年に千円を超える。東京だと31年、大阪だと33年に達するが、鳥取など4県は40年まで待たねばならない。

 それでも年3%の上昇はハードルが高いとの見方が強い。実際、ここ最近の増加率は、2・5%を下回っているからだ。

 そもそも、最低賃金の千円引き上げは、民主党政権が平成22年、10年後までに達成すると決定した経緯がある。まさに安倍政権にお株を奪われた形の民主党は、枝野幸男幹事長が11月25日の記者会見で「積極的に取り組む姿勢を示したことは評価したいが、民主党時代の経済運営が正しかったということをまず認めるべきだ」と批判するのが精いっぱいだった。

 アベノミクスを背景にした「官製春闘」による賃上げなど、日本ではこのところ、労使関係における政府の役割が大きくなっている。韓国ともドイツとも異なる傾向が、吉と出るか凶と出るかは、注視しておく必要があるだろう。


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