北海道の鈴木直道知事が25日、朝日新聞のインタビューに応じた。今年初めからの新型コロナウイルス対策を振り返り、全国でも感染拡大のピークが早めに到来した道の状況から、前例がない難しい政策判断を迫られてきたと強調。国の観光支援策「Go To トラベル」では、一斉停止で混乱が生じたことも踏まえ、今後の再開判断にあたっては自治体との連携強化を改めて国に求める考えを示した。
新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、政府の観光支援事業「Go To トラベル」の利用が28日から、一時停止した。書き入れ時の年末年始を迎えるはずだった群馬県内宿泊施設では、キャンセル料が無料だった27日までに予約取り消しが相次ぎ、例年なら満室の旅館も稼働率が半分以下に低迷。一時停止される来年1月11日まではキャンセルされた事業者に宿泊料の半額が補償されるが、それ以降も予約のない旅館は「先が全く見通せない」と悲愴(ひそう)感を漂わせた。 「予約は大みそかと元日が例年の5割弱。それ以外は2〜3割になっている」。草津温泉(草津町)の旅館の経営幹部は、経験したことのない厳しい年末年始を嘆く。14日にGoToの利用停止が発表される前は、ほぼ満室で光が見えていたが、ここ2週間でキャンセルが殺到した。
新型コロナウイルスの感染拡大で1都3県への緊急事態宣言が発令された場合、観光支援事業「Go To トラベル」の全国一時停止は延長される見通しとなった。首都圏からの利用も多く、再開後の誘客を準備してきた県内の観光関係者は「影響は大きい」と不安の声を上げ、対応策を探っている。
「ここに来ての緊急事態宣言は影響が大きい」。大正浪漫調の街並み整備が進む会津若松市の七日町通りでまちづくりにあたる渋川恵男(ともお)さん(73)は肩を落とす。昨年4月の緊急事態宣言で観光客は一時激減したが、10月と11月には修学旅行生や個人客を中心ににぎわいが復活、平日も含め大勢が通りを行き交った。しかし、「Go To トラベル」の一時停止も影響し、年末年始は例年以上に静かだった。「アフターコロナを見据え、準備をする時期と捉えるべきなのだろう。生き残るため知恵を絞る」と声を絞り出す。
二本松市岳温泉の温泉旅館のおかみは「(政府は)いつもぎりぎりになってから、突然に決断され、振り回される」と憤る。「Go To トラベル」の一時停止で予約がキャンセルとなり、年末年始の宿泊客は例年の2、3割程度。だが、再開予定の12日以降の土、日曜日にはGo To利用の予約が満室に近い状態だっただけに「一時停止が延長されれば、またがらがらになるのが予測できる。年は越したが、このまま続けられるか」と懸念する。
高湯温泉観光協会(福島市)の遠藤淳一会長(65)は、「Go To トラベル」の再開予定後の予約もキャンセルが出ていることを挙げ「感染拡大が続けば、再開しても、すぐに客足は回復しない。高湯は首都圏からの宿泊客が中心で、影響は大きい。耐えるしかない」と吐露した。
現在、コロナの感染再拡大に伴い、複数の地域で食事券の販売は一時停止されているが、飲食店への支援を継続するため、第3次補正予算でも食事券は追加発行されることになった。
ニューノーマルな時代に飲食店に求められること
しかし、食事券は一時的な効果しか生まない。コロナ禍でも客を引きつける魅力あるメニューや感染対策を意識した店舗構造など、客が求めるニーズは変化している。飲食店には「Go To Eat」のその先を見据えた工夫や試行錯誤が求められる。
旅館はプールを併設し、悩んだ末に営業を決めた。すると、近郊の公営プールが休業していたことが追い風となり、来館者が例年の数倍に増え、感染予防のため、入場を断る日もあった。政府の支援策「Go To トラベル」も始まり、秋には念願の修学旅行生が戻ってきた。久しぶりに響くはしゃぎ声。「いつもはこんなにぎやかさだったと、うれしくて涙が出そうだった」