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法学論集
1982
:
とはずがたり
:2013/04/13(土) 19:23:00
>>1981-1982
■「嫌がらせ」で割り込み、急ブレーキ
なぜ、見通しのいい片側2車線の直線道路で悲劇が起きたのか。それは、事故現場の約500メートル手前の交差点で、軽乗用車が加速しながら追い抜いていったことに腹を立て、佐藤容疑者がトレーラーを暴走させたことが発端だった。
捜査関係者によると、佐藤容疑者は左側の走行車線で時速70〜80キロに加速し、右側の追い越し車線を先行していた軽乗用車に追いつくと、急ハンドルで車線変更して前方に割り込み、「嫌がらせのために」(佐藤容疑者の供述)、急ブレーキを踏んだという。
ところが、その弾みでトレーラーの荷台部分が右に急旋回し、制御できぬまま対向車線にはみ出し、渋谷さんの軽ワゴン車に衝突した。現場にはトレーラーのタイヤ痕が克明に刻まれていた。
犬が尻尾を振るように荷台部分が急旋回する現象は、「スイング現象」と呼ばれる。スピードを出して急ブレーキをかけると、荷台の後輪がロックされ、車両との連結部分を起点に文字通り「スイング」してしまうのだ。
捜査関係者は「大型車の運転手であれば誰もが知っている」と指摘する。
■最長懲役20年「短絡すぎる犯行」に警鐘
スイング現象に渋谷さんの死、ひき逃げ、さらに「カチンと来た」という佐藤容疑者の供述−。警視庁は重大な死亡事故とみて、送検段階で危険運転致死容疑に切り替え、捜査の指揮を蒲田署長から交通部長に格上げし、交通捜査課を中心に捜査を続けた。
危険運転致死傷罪は、平成11年に東名高速で飲酒運転の大型トラックが乗用車に追突し、女児2人が死亡するなどした事故をきっかけに13年に新設され、死亡させた場合には最長20年の懲役が科せられる重罪。ただ、罪の構成要件が厳しく、適用が断念されることも少なくなかった。
警視庁と東京地検は今回、佐藤容疑者の暴走運転が、同罪を規定した刑法208条の2のうち第2項の「妨害目的の運転」に当たると判断。さらに、「錯誤」という刑法上の理論を組み合わせることで、構成要件を満たしたという。
妨害目的の運転は《人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、人を死傷させた》場合を規定している。
佐藤容疑者が腹いせに軽乗用車の前に割り込んだ疑いが強く、妨害目的は問題ないとみられるが、妨害の対象となった軽乗用車は渋谷さんの車とは異なる。
ただ、捜査関係者は「刑法には、Aさんを殺害しようとしてBさんを誤って殺害した場合にも殺意が認められる『錯誤』という理論がある」と指摘する。この理論を当てはめ、「軽乗用車を妨害する目的で、渋谷さんの車に当たって死亡させてしまった」という形で起訴にこぎ着けた。
「あまりにも短絡的な犯行。遺族としては殺人以上に悲しいことかもしれず、危険運転致死罪で立件する意義がある」。捜査関係者はこう強調した。
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