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不動産・土木・建設・土地建物等綜合スレ

1737とはずがたり:2016/10/21(金) 17:14:52
>>1736-1737
第二次大戦後の日本では住宅が不足していて、1958年には日本の住宅数は1793万戸と総世帯数1865世帯を下回る状態だった。しかし、2013年には住宅数は6063万戸となって世帯数の5246万世帯を大きく上回っている。1958年にわずか2%に過ぎなかった空き家率も、2013年には13.5%に上昇し、普段誰も住んでいない空き家は820万戸にも上る。

多くの日本人が金持ちになって、休暇で利用する別荘や残業で遅くなった時に寝泊まりするためのセカンドハウスを持つようになったというであれば、空き家の増加は意図されたもので、大きな問題ではない。しかし、こうした二次的住宅は40万戸程度で、空き家全体の中のわずか5%を占めるに過ぎない。820万戸の空き家のうちで賃貸用住宅は430万戸と半分以上を占めている。

大量の空き家があるという状況の中で、超低金利で貸家の大量供給を促進することに、どれだけの意味があるだろうか。 人口が減少する中でも高齢単身世帯の増加によって世帯数の増加はしばらく続くと見られるが、それでも世帯数は2019年をピークに減少に転じると予測されている。住宅の平均面積の拡大や設備の充実という面で、住宅投資の必要性はなくならないものの、単純に住宅数を増やすという意味はなくなっている。

ムダを付け加える投資は将来の所得を減らす
空家が13%以上にも上るということは、日本の住宅資産価値約357兆円(国民経済計算年報2014年末)から計算すると数十兆円の資産が使われることなく放置されていることになるが、貸家の大量供給はさらに空き家を増やすという形でムダを付け加えることになってしまうのではないか。

住宅投資はGDP(国内総生産)の需要項目の一つなので、誰も住むことがなく使われない住宅でも建設された時点ではGDPを拡大させる。しかし、投資が行われれば所得が生まれるという点だけを強調し過ぎるのは問題だ。確かに投資が行われた時点では所得が生まれるが、その後は固定資本減耗が所得を減らすことになるので、投資で作られた施設が期待通りに利用されて価値を生み出さなければ却って所得が減少してしまうということが起こる。

借り入れをして貸し家を建設してしても期待したほど借り手が集まらなければ、投資を行った人は債務の返済に苦しむことになる。1980年代後半のバブル景気では、転売を目的としたワンルームマンションへの投資がブームになった。ユニットバスと最低限の調理ができる小さな調理台が付いただけの狭い部屋でも飛ぶように売れたが、バブルが崩壊すると投資家は債務の返済に追われることになった。

今回は、2020年の東京オリンピックや最近の訪日客数の増加による民泊という需要も喧伝されているが、800万戸の空き家の上にさらに毎年何十万戸もの貸家を建設しなくてはならないというほどの需要ではないだろう。

多くの投資家がそろって投資採算の目算が狂ったということになれば、失敗の穴埋めのためにするために多くの家計で消費を削減する必要に迫られて、経済は大きく落ち込んでしまう上に、税収も大きく減少してしまう恐れがある。

失業よりも人手不足が問題なのに
多数の失業者がいたり工場の生産設備の稼働率が低かったりするなど、国内に未利用・低利用の資源が大量にあるという場合には、金融緩和政策で需要を喚起し、失業者を減らして生産設備の稼働率を高めれば、資源の利用効率は上がる。しかし、日本の失業率は既に3%程度に低下しており、失業よりは人手不足が問題となり始めている。

ケインズは穴を掘って埋め戻すという需要でも意味があると言ったが、それは大恐慌のような著しい需要不足を背景とした時代のことだ。チャーチルとケインズは相性が悪く、チャーチルが「ケインズは同じ問題に二つの意見を言う」と皮肉を言ったという話が残っているが、ムダな需要でも必要だというのは時と場合による。現在の日本経済では大量の失業者という未活用の人材資源があるわけではないので、金融政策によって利用効率が高まるという効果は期待し難い。

日本経済の資源の効率的な利用を促進することを目指しているはずの超低金利政策は、相続税対策の貸家建設を促進して、かえって経済全体の効率を低下させてしまうなど、本来の目的からすると逆効果となっているのではないだろうか。


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