したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

不動産・土木・建設・土地建物等綜合スレ

1237とはずがたり:2013/05/06(月) 17:14:02
>>1236-1237
 進捗(しんちょく)具合を毎日確認する金井の思い入れの強さにプレッシャーを感じながらも、青木は研究を進めていった。価格は割高だが強度の高い「普通ポルトランドセメント」や、硬化する速度が遅くて強度が出にくいものの安価な「高炉セメント」をベースに、さまざまな濃度の人工塩水や真水などを組み合わせる実験を繰り返す。神奈川県茅ケ崎市の海岸に出向き、バケツでくんだ海水をサンプルにしてセメントとの相性も探った。しかし、これといった成果を出せずに時間が過ぎていく。プロジェクトのスタートから約3年後の10年5月、青木から告げられた報告に金井が驚く。「安価な高炉セメントに天然の海水を混ぜてみたら、強度が出ました」。

 計測してみると、真水でコンクリートを練った場合よりも強度は60%以上も高く、さらに透水係数も「普通ポルトランドセメント」の70分の1で気密性が高い。低レベル放射性廃棄物を封じ込めてしまう岩塩層の透水係数100分の1が視野に入るレベルだ。

 廃棄物に由来する高炉セメントと、天然の海水という2つの安価な素材の組み合わせで強度を持つコンクリートが生まれた。金井は「金やマグネシウムなど、海水にはさまざまな成分が入り込んでおり、塩を入れただけの人工海水にはない働きをしたに違いない」と推測する。さびを防ぐために混ぜた防錆(ぼうせい)剤が「強度をより高める効果を発揮した」ことも、技術研究所の主任技師でコンクリートのエキスパート、竹田宣典(53)の分析で分かり、実用化の道が一気に開けた。

 当初は「金井がやっている『家内(かない)』工業」と自らが揶揄(やゆ)するような貧弱な態勢だったが、竹田もチームに加わり、10年11月ごろ、研究成果が形となるまでにこぎ着けた。もともとは、放射性廃棄物の処理に役立つ技術を模索して着想した海水練り・海砂コンクリートだったが、震災を機に復旧・復興に欠かせない技術として図らずも用途が広がる。

 折しも政府は2013年度予算に884億円を計上し、公共施設の耐震化や津波対策を加速させる計画を立てている。金井は新技術を、まずは被災地の復興や安全対策に役立てたいと願い、関係省庁や自治体に積極的に働きかけていく考えだ。さらに、洋上風力発電施設など、真水を使うのが難しい場所でコンクリートを製造する技術としてもアピールしていく。実際、沿岸部に作ることが多い飛行場施設に最適な技術だとして海外の軍事産業の関係者から引き合いも来ているという。

 冷ややかだった社内の雰囲気は一変し、プロジェクトは大林組挙げての取り組みに昇格する。施工案件の拡大に向け、社内のさまざまな部署の担当者が駆け回る。開発成果を公表する前、金井は当時の土木学会会長だった岡山大学の阪田憲次名誉教授などコンクリート研究の重鎮14人に客観的な分析を求めた。すると、このうち12人が「実は私も可能性があると思っていた」と話し、大林組の挑戦を高く評価した。

 海水の潜在力に気付きながら指摘してこなかった重鎮たちの沈黙ぶりは、タブーを覆すために行動を起こすことがいかに難しいかを示している。何度も頓挫しかけながら、金井らスタッフの信念と熱意が生み出した新たなコンクリート技術。国内だけでなく世界に活用の道が広がり、今まさに飛躍のときを迎えている。=敬称略(那須慎一)


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板