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Tohazugatali Medical Review

5421チバQ:2020/05/21(木) 11:05:28

厚労省が抱える

「3つのトラウマ」

 さて、ここで再び話を戻す。世間の多くの人は下記のように思うだろう。

「今は非常事態なのだから、妊婦が飲まなければ、いいだけの話だろう…」――。

 しかし、そう簡単にはいかないのが、新薬の安全性を評価する厚生労働省や専門家の立場である。ある元厚労省幹部は「厚生労働省には『3つのトラウマ』がある。これがある限り、慎重にならざるを得ない」と語る。

「3つのトラウマ」とは何か。それは、いずれも有名な薬害事件だ。

 まず、一つは前述したサリドマイド事件。

 2つ目は、薬害エイズ事件。

 これはご記憶の方も多いだろう。1980年代に血友病患者に対し、加熱処理をしない血液凝固因子製剤(非加熱製剤)を用いた治療により、多くのHIV感染者やエイズ患者が発生した薬害事件だ。

 そして、3つ目は、イレッサ事件だ。

 イレッサとは、非小細胞肺がんの治療薬であり、当時、臨床開発段階から世界的に話題となっていた画期的な分子標的薬だった。作用メカニズム上、副作用は少ないと予想されていた。しかし承認後、副作用によって多くの患者が間質性肺炎を発症し、死亡してしまったのは周知の通りだ。

 これら3つの事件では、製造販売元の製薬会社だけでなく、厚労省(当時は厚生省の場合もある)も同様に、世論やマスコミから強く批判された。

 いずれの批判も「十分な検討をせず、安全性への配慮が足りなかった」というものだ。

 体外検査薬ならともかく、患者が服用する医薬品の場合、「スピード審査」によって何か重大な副作用が生じたら、大きな社会問題につながりかねない

 事実、サリドマイドは事件後、不十分な臨床試験データと1年半という短い審査期間が大きく問題視された。

 2002年7月に承認されたイレッサも、申請からわずか5カ月と抗エイズ薬を除けば最速で承認された新薬として、当時、大きな話題となっていた。

 当時の状況を説明すれば、日本のがん患者にとって「海外には有望な新薬があるのに、国内ではその新薬が承認されていない」という薬が多く存在しており、「日本と海外の使える新薬の格差」が社会問題化されていた。このため、イレッサは世界に先駆けて日本が最初の承認国だったこともあり、日本のマスコミ各社は厚労省のスピード審査を称賛したのである。

 その「称賛」が後に大批判に変わってしまったのは、言うまでもない。


国民を薬害から守った

FDAの担当官

 現在、アビガンは、個々の医師の責任において、患者に副作用の説明をし、患者はリスクを覚悟した上で了承し服用している状態だ。

 厚労省が承認という「お墨付き」を与えるとなると、話は違ってくる。処方量は一気に増えるし、責任は極めて大きい。

「世論やマスコミ、政治家の言うことを聞いて、専門家として十分な検討をしなければ、後で痛い目に遭ってしまう」――。

 厚労省側が慎重に考えるのも無理はないだろう。

 ちなみに、サリドマイドに関しては当時、世界40カ国以上で発売されたものの、FDA(アメリカ食品医薬品局)はサリドマイドを承認しなかった。後に、その審査担当官のケルシー氏は「アメリカ国民を薬害から守ったとして、ケネディ大統領から表彰された(※)」という経緯があり、「世界のFDA」という評価が一気に高まった。

 そんなエピソードもあるだけに、催奇形性の副作用は「多くの研究者や審査官、医師などの専門家にとって、職業倫理や矜持に触れるような特別な問題」(製薬業界関係者)なのだという。

 こうした事情もあり、厳しい審査を迎えるアビガン。

 確かに新型コロナウイルス感染症の治療薬は、なるべく迅速に、しかも手元に多くの選択肢があればあるほど喜ばしいが、このような「悩ましい事情」も抱えている。

 新型コロナウイルス感染症の新薬として、陽の目を見ることはあるのだろうか。

※参考資料:

・厚生労働省・薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会「サリドマイド薬害事件の歴史と薬の催奇形性・先天異常 に関する教育の重要性」2010年9月14日佐藤嗣道(財・いしずえ/サリドマイド福祉センター)

・「サリドマイド事件の概要と被害者の今」2015年8月24日公益財団法人いしずえ(サリドマイド福祉センター)佐藤嗣道


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