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Tohazugatali Medical Review

5076とはずがたり:2018/08/09(木) 19:59:38
>>5074-5076
 【新研修医制度を廃止すれば解決するのか】

 医大教員としての経験から言うと、男性が「大器晩成」ならば、女性は「中器速成」だと感じている。18歳の時点では女性のほうが早熟で目的意識もはっきりしており、器が固まる(ある意味、限界に達する)のも女性のほうが速いような気がする。ゆえに、女性のキャリア形成は「就職から妊娠までの黄金期はハードに働いてスキルを磨き、出産前に1人立ちできるよう育てる」というのが鉄則だと考えている。

 2004年に厚生労働省が創設した新研修医療制度は、いわば「医大卒業後2年間は数カ月ずついろんな科を担当させ、お客様扱いでユルく研修する」といった内容で、これにより専門科のトレーニング開始が遅れるようになった。制度が変わっても、高齢出産の医学的なリスクは変わらない。35歳までに出産を終えたいならば、この2年間のモラトリアムが、女医のキャリア形成にとって痛いのだ。

 仮に自身の出産を優先する女医の場合、専門家として鍛えてもらえる時間が少なくなるため、結果的に「一生、使い物にならない医者のままで終わる」というリスクが高まるからである。

 また、新研修医療制度で、卒業後2年間は「お客様扱い」することになったので、大学病院としては若手医師を病院経営のマンパワーとして使いづらくなってしまった。この結果、医師不足が深刻化し、「女性減点入試」の契機になったのではないかと推察している。8月6日の調査委員会による記者会見でも、得点調整について「2006年頃からの可能性」を指摘している。

 「女性減点入試」を解決する方法としては、新研修医制度を廃止することもひとつの手だろう。新制度で失われた2学年分のマンパワーをどうすれば復活できるか、を考える必要がある。

 【2018年開始の新専門医制度でさらなる医師不足】

 しかし、厚労省はこの制度を止めるどころか、日本専門医機構という第三者機関を増設することで、2018年度から「新専門医制度(卒業後3〜5年目を対象)」を追加している。

 一期生では「22%が東京に集中」「内科・外科が激減」「小児科562人中、東京130人、佐賀・徳島ゼロ」と、若手医師が多忙科や地方を避ける動きに拍車がかかったように見える。

 だが専門医機構は「東京に医師が集中する傾向は見られない」と公言しており、中止する気はないようだ。このままでは水面下での女性排除は、今後もさまざまに形を変えて、より巧妙な形で残ってしまうのではないだろうか。

 【結語】

 今回の東京医大の事件は、単純な「女性差別はけしからん」で終わらせず、医者の働き方改革や医師養成制度の見直しにつなげて考えるべきだろう。私がフリーランスになったのも、従来の「定額制使いたい放題」のようなシステムでは、子育てどころか過労死しかねないと思ったからである。

 女医の産・育休、時短を周囲の無償労働で補う現状は、長い目でみると女性を排除する方向に働く。男女ともに少ないストレスで働けるようにするためには、働きに応じた報酬システムや、フェアな競争環境を整えることが必要だ。それこそが真に有効な女性活躍につながると確信している。

フリーランス麻酔科医、医学博士 筒井 冨美 写真=iStock.com


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