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Tohazugatali Medical Review
4871
:
とはずがたり
:2017/05/19(金) 10:27:16
哺乳類はみんな「おしっこ21秒」の不思議
https://mainichi.jp/premier/health/articles/20170502/med/00m/010/023000c
2017年5月4日 堀江重郎 / 順天堂大学教授
体重3kg以上の哺乳類 意外な共通点
動物種によって、排尿に要する時間は異なるのか--。こんなことを検討した愉快な研究が、2015年のイグノーベル賞(物理学賞)に選ばれました。イグノーベル賞には、ユーモラスでありながらも、しっかりとした科学的な研究が選ばれています。この研究によると、体重が3kg以上ある哺乳類は、どれも約21秒で排尿しているというのです。つまり、ゾウもキリンもヤギもトラもチンパンジーも、みんな排尿時間は、おおむね21秒なのです。
体の大きな動物の方が、排尿時間は長いような気もします。でも、体が大きくなれば、当然ぼうこうの容量も大きくなるのですが、おしっこを出す尿道も太くなり、勢いよくおしっこが排出されます。そのため、体が小さくてぼうこうの容量も小さい動物と排尿時間は変わらないのです。
謎の臓器「ぼうこう」
なぜ、哺乳類は、一様に21秒という排尿時間になったのでしょうか?
例えば、心拍数、寿命、酸素消費量は動物種によって異なります。生存に有利な形質を持った者が生き残っていくというダーウィンの進化論の自然淘汰説(しぜんとうたせつ)で考えると、「21秒」には何か理由があるはずです。
そもそも、爬虫(はちゅう)類や鳥類にはおしっこをためるぼうこうという臓器はありません。総排泄腔(そうはいせつくう)と呼ばれる器官から、おしっこが作られるたびに排泄しています。一方で、哺乳類はぼうこうにおしっこをためて、まとめて排出しています。ということは哺乳類にとっては、ぼうこうを持つことが生存に適していることになります。
ぼうこうを持つメリットは何でしょう? おしっこの臭いから天敵に存在を知られて捕獲される危険を減らすとか、縄張りを主張するマーキングには、まとまった量のおしっこが必要などの理由が想像できます。しかし、実はぼうこうの進化の理由はあまりよく分かっていません。一方、なんらかの遺伝子群がぼうこうの形成に関わっていることは分かっています。哺乳類がぼうこうを持つようになった理由は、これらの遺伝子群が、いつ、どのように現れたのかが解明されて、初めて理解されるのでしょう。
21秒が「若返り」の鍵?
もちろん、ヒトも生殖年齢では、ほぼ21秒で排尿しています(厳密にいえば女性は男性よりも排尿時間は短い)。しかし高齢になると、男女ともぼうこうの筋力が低下することで、男性はさらに前立腺の肥大によって、排尿を21秒で終えることが難しくなります。見方をかえれば、排尿時間が21秒を超えるようになった人を高齢者と言ってよいかもしれません。
しかし、前立腺がんで前立腺を手術で摘出した男性は、排尿時間が21秒以下に一気に減少します。海外の研究では、前立腺を摘出した男性は、一般の男性よりも長生きであることが知られています。前立腺は、尿の切れに関わり、精子のクオリティーをあげる役割があります。しかし、高齢者にとっては車の速度を制限するリミッターのようなもので、排尿をしにくくする煩わしい存在になりがちです。リミッターを外した車が、爆音をあげて猛スピードで走っているのを見ると、男性も前立腺を摘出して21秒の排尿に戻ることで、「若返る」のかもしれないと考えています。
前立腺肥大症の手術のひとつに、レーザーで肥大した部分をくりぬいてしまう、経尿道的ホルミニウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)という手術があります。この手術を受けた方は「おしっこの出方が高校生の時に戻ったようだ」と喜ばれます。加えて、男性の元気度のバロメーターである「男性ホルモン」テストステロンの値が上がり、起床時の勃起が回復してくる方もいます。
気持ち良いおしっこをする「快尿」という言葉を、旭川医科大学の松本成史先生が提唱されています。快尿を取り戻すことが、アンチエイジングになるというのは面白いですね。
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堀江重郎
堀江重郎
順天堂大学教授
ほりえ・しげお 順天堂大学大学院教授、泌尿器科医。1960年生まれ。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得し、国立がんセンター中央病院などを経て、42歳で帝京大学医学部主任教授に就任。日本初の男性外来であるメンズヘルス外来を開設。2012年より現職。手術ロボット・ダヴィンチを駆使した前立腺、腎臓手術のトップランナーであると同時に、アンチエイジングと男性医学、腎臓学の研究に没頭している。中高年男性をハツラツとさせるのが生きがい。日本メンズヘルス医学会理事長、日本抗加齢医学会副理事長。著書に「ヤル気がでる!最強の男性医療」(文春新書)、「男性の病気の手術と治療」(かまくら春秋社)ほか。
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