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Tohazugatali Medical Review
4685
:
とはずがたり
:2016/08/30(火) 13:52:16
>>4684-4685
事件の真相は?
3つの可能性考えられます。
1、わいせつ行為があった可能性
手術後、四人部屋に入った患者さん。患者さんどうしはカーテンで区切られていますから、お互いが見えることはありません。そしてナースは常に手術後の患者さんのそばにいるわけではなく、患者さんが痛みを訴えたら痛止めを取ってくるなどしてベッドサイドから離れる時間はあります。ですから、医師が患者さんと二人きりになる可能性はあります。密室ではありませんが、カーテンで区切られています。手術直後の場合は数人のナースが患者さんのベッドサイドに出入りするため、数分単位という極めて短時間にはなりますが、わいせつ行為が行われる可能性はゼロではありません。
2、胸の診察を「わいせつ行為」ととられた可能性
胸の手術を執刀した医師が、自らメスを入れた部分を観察し出血がないことを確認するのは必須の診療行為です。ですから胸をはだけさせて診察するのは当然で、それ自体はわいせつ行為ではありません。もしそれをわいせつ行為と取られるのならば、筆者は日々大腸外科医として下腹部を見て触り、直腸の病気の方には肛門に指を入れるなどの診察を行っていますから、毎日わいせつ行為で逮捕されることになります。
男性医師は、女性の診察の際には「密室で二人きりにならないこと」「女性看護師を同席させること」をせよと習います。それは、患者さんへの配慮をすることのほかに、「何かされた」と訴えられたら証拠がないので医師自身の身を守れないからという意味もあります。
診察という行為は、直接体を触り、全身をくまなく直接見ることが基本です。それがわいせつ行為とされてしまったら、診察自体が不可能になります。また、「女性看護師を同席させること」を100%行うのは、現場の多忙さから考えて極めて実現困難です。
3、術後せん妄による勘違いの可能性
この患者さんが「術後せん妄(もう)」であった可能性です。「術後せん妄」とは、簡単にいうと手術直後あるいは数日後に発症する、意識が障害され短時間で良くなったり悪くなったりするものです。一旦この「術後せん妄」に陥ってしまうと、話はほぼ全く通じなくなり手術直後なのに「家に帰る」といってベッドから起きようとしたり、点滴をハサミで切ったり、大事な管を引き抜いてしまったりすることがあります。
また、ある医学論文では、麻酔薬(おそらく今回の手術でも使ったであろうプロポフォールなど)によって性的な幻覚が生じることがあると報告されています(*1)。そのため、今回の一件でも「術後せん妄」または麻酔薬による幻覚であったという可能性はあります。
医師の視点
今回の件で、わいせつ行為が本当にあったか否かは現段階でははっきりしていません。医療の現場では、身体を診察するという行為の特性上、また密室になりやすいこと、そして患者さんの意識が変容していることもあることなどから、わいせつ行為のつもりではなくともわいせつと言われてしまうと反論が極めて難しいという側面があります。
本件では、それが起こってから3ヶ月後に逮捕となりました。通常逮捕と呼ばれるこの逮捕で、マスコミに逮捕することや氏名・年齢・住所まで情報を流し撮影させていたのですから、警察は何かしらの証拠を掴んでいるのかもしれません。今後の情報を注視したいと思います。
(*1)Sexual hallucinations during and after sedation and anaesthesia. Balasubramaniam B, Park GR. Anaesthesia 2003 Jun;58(6):549-53.
※逮捕された医師は筆者の勤務先でも非常勤医師として勤務しており、筆者は7年前に数ヶ月間直接の指導を受けたことがあります。ここ6年ほどは直接会っておらずやりとりもありません。そのため影響は小さいと考えますが、知人であるという点で本記事は客観性を欠いている可能性があります。
中山祐次郎
一介の外科医
1980年神奈川県生まれ。聖光学院高等学校を卒業後、2年間の浪人生活を経て、鹿児島大学医学部医学科を卒業。その後、がん・感染症センター都立駒込病院外科初期・後期研修医を修了。現在は同院大腸外科医師(非常勤)として勤務。参加手術件数は1年に233件(2014年度)。資格はマンモグラフィー読影認定医、外科専門医、がん治療認定医など。モットーは「いつ死んでも後悔するように生きる」。著書は「幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと?若き外科医が見つめた『いのち』の現場三百六十五日?」(2014年3月 幻冬舎)。
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