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電力・発電・原子力スレ
2397
:
とはずがたり
:2014/07/07(月) 13:16:42
MSRE の成功後、ORNL は 1970 年代に 100 万 KWe の MSBR(熔融塩増殖炉)を設計した。MSBR は、出口
温度約 700 度の弗化物熔融塩(LiF-BeF2-ThF4-UF4)を用い、減速材の黒鉛を 4 年毎に交換し、オンラ
イン再処理設備を併設することにより増殖比1.06を達成できる、という設計であった。
しかし、その後、1976 年に熔融塩炉研究は全て中止された。その理由については、ORNL 所長のワインバーグは自伝で、①当時の潜水艦に搭載された軽水炉が陸上の発電炉用に先行した、②原爆のために U-Pu サイクルが先行した、③Pu を使うための高速増殖炉の開発予算が付いて賛同者が多かった、④熔融塩炉は今までの原発と全く異なる概念で理解者が少なかった、⑤熔融塩炉では原爆用の Pu を生み出せないので好まれなかった、と述べている。
その後、米国では停滞状態が続いたが、2002 年に GIF(第4世代原子力システムに関する国際フォーラム
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/gif.html
)(第 4 世代原子炉)の6候補の 1 つとして選定され、米国は弗化物塩冷却高温炉 FHR(Fluoride Salt-Cooled High Temperature Reactor)を提案している。FHR とは、高温ガス炉で開発された黒鉛被覆燃料を使用し、冷却にフリーベ熔融塩を使用する原子炉であり、2000 年代中頃からORNL の概念設計をもとに MIT 等の大学により個別要素研究(材料腐食、熱流動、燃料交換)が進められてきたものである。その一環として 2012年末より弗化物熔融塩の照射実験が MIT 原子炉で開始されている。
また、後述の中国のトリウム熔融塩炉開発計画に協力するという趣旨で、米国 DOE と中国科学院との間で協力協定が締結されたとのニュースがあった。ただ、現時点では、協力範囲は、上記の FHR に限定されている。
米国では、エネルギー保障の観点から、また米国発の技術である熔融塩炉を活用したいという観点から、トリウム熔融塩炉を見直そうという風潮が見られ、トリウムエネルギー連合という民間団体がトリウムエネルギー会議を2009年以降、毎年開催している。
4)中国の開発計画
2010 年 3 月に、中国はトリウム熔融塩炉プロジェクト開始を政府決定し、その後、2011 年 1 月に中国・科学院が公式発表を行なった。
本プロジェクトは、中国政府の Innovation-2020(先端開発研究プロジェクト)のひとつとして選定され、中国科学院/上海応用物理研究所(以下 SINAP)が担当している。
SINAP の最初の実験炉(熱出力 2MW)は弗化物熔融塩を冷却剤にのみ用い、球状で固体の黒鉛被覆粒子燃料による熔融塩冷却炉(FHR: Fluoride cooled High-temperature Reactor)で、2017 年に臨界の予定である。FHR の設計と安全性(許認可対応)は米国 DOE との共同研究で進めるとのことである。
平行して開発を進めているトリウム弗化物熔融塩を液体燃料として用いた実験炉(熱出力 2MW、miniFUJI 相当の設計仕様)は2020 年頃に臨界の予定としている。SINAP では、トリウム資源利用と廃棄物最小化にはこの液体燃料熔融塩炉が本命としている。2012 年から 5年間の開発予算として約 500億円(500M$)が計上されている。
引き続き2020年以降には電気出力10Mweクラスの発電実験炉を建設し、2030年頃に電気出力100Mweの発電実証炉を建設するとしている。いわゆる小型炉に必要な電力は100Mwe(10 万 KWe)なので、この時点で、小型炉市場に参入できる製品化が完了することになる。その後、大型化を目指しているように思われる。
中国政府レベルのトリウム原子力計画では、黒鉛減速・オンライン再処理なしの熔融塩炉を主眼とし、初期燃料の U233 は、平行して開発する ADS(陽子加速器による原子核破砕中性子を用いトリウムから U233 を製造するシステム)で大量製造する。ADS については中国科学院・近代物理研究所がSINAPと同額の約 500 億円相当の予算で研究を始めている。これらの全体構想は明示されていないが、日本の小型熔融塩炉FUJI 計画と燃料サイクルの概念THORIMS-NES(トリウム熔融塩核エネルギー協働システム:参考文献2)と類似の計画と考えられる。
実験施設として、2011 年末に、全ての部品を中国国内で製造した熔融塩ループを完成させている。このループは硝酸塩を用いたもので、配管やポンプはステンレスである。2013 年 4 月時点では、第2の熔融塩ループが完成し試運転が行われている。ここでは、フリナック(FLiNaK)と呼ばれる弗化物塩(LiF-NaF-KF)を使用し、ニッケル系高温材料(ハステロイ C276)を配管などに用いており、その仕様は、熔融塩冷却炉 FHR の基本設計条件を満たしている。2013 年からフリーベ(FLiBe)とハステロイNを用いた実験炉模擬ループを設計・製作する計画としている。
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