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米、中東外交を仕切り直し イスラエルとサウジの国交正常化模索 難航は必至
6/9(金) 18:58配信
産経新聞
【ワシントン=大内清】ブリンケン米国務長官は8日、3日間のサウジアラビア滞在を終えた。今回の訪問でブリンケン氏は、中東における2大同盟国であるサウジとイスラエルの国交正常化に向けた橋渡しを模索。外遊は、中国やロシアがイランと接近するなど中東の力学が変化する中で行き詰まりをみせていた中東外交の仕切り直しを図るものとなった。
8日の帰国に先立って記者会見したブリンケン氏は、イスラエルとサウジを含むアラブ諸国の国交正常化を促進することが「米国の戦略のカギ」だと語った。帰途の機中ではイスラエルのネタニヤフ首相と電話で正常化問題を協議。サウジ側から得た感触を伝えたものとみられる。
米国の中東外交はここ数年で何度も変転した。サウジ、イスラエルの両国と緊密な関係を築いたトランプ前政権は2018年、オバマ政権が結んだイラン核合意から一方的に離脱し、イランへの圧力を強めた。末期にはアラブ首長国連邦(UAE)など一部のアラブ諸国とイスラエルの国交正常化を実現し、「イラン包囲網」を強化している。
これに対しバイデン政権は、イラン核合意の修復によって域内の緊張緩和を目指すことを中東外交の基調に置いた。
だが昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、イランが露軍への兵器供与に乗り出したことで、一時は妥結寸前にこぎつけた核合意の再建協議は頓挫。世界的なエネルギー高騰の解消に向け、人権問題を巡って関係が険悪化していたサウジに歩み寄って石油増産を働きかけたものの、成果はあがらなかった。対イスラエルでは、バイデン政権が推すパレスチナとの「2国家共存」案に否定的なネタニヤフ氏が右派連合を率いて政権に返り咲いたことでぎくしゃくした関係が続く。八方ふさがりといっていい状態だ。
そこで目を向けたのが、イスラエルとサウジの国交正常化を仲介することで中東での影響力確保を図る路線だ。断交していたサウジとイランが今年3月、中国の仲介で関係正常化に合意し、米国の影響力低下がささやかれたことも方針転換を後押ししたとみられる。
米ネットメディア「アクシオス」によると、バイデン政権は今後6〜7カ月でイスラエルとサウジの正常化に向けた動きを軌道に乗せたい考え。バイデン大統領が再選を狙う来年11月の大統領選を前に大きな外交的成果をあげ、選挙運動に勢いをつけたいとの計算もにじむ。しかし、道のりは険しい。サウジのファイサル外相は8日の会見で、国交正常化に前向きな姿勢を示しつつも、前提としてイスラエルと将来のパレスチナ国家による「2国家共存への道が開かれる必要がある」と強調した。アラブ諸国の盟主を自任するサウジとしては、「パレスチナを見捨てた」との印象は避けたいためだ。
ところが、ネタニヤフ政権は国際法に反するヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地建設を推進しており、そもそも「2国家共存」案には否定的だ。バイデン政権の仲介努力は、出発点から壁に直面している。
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