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スーフィズムに関するHP

1348とはずがたり:2016/01/04(月) 20:17:41
>>1346-1348

2014年の半ばから、原油価格は既に下落し続けています。2014年11月のOPEC(石油輸出国機構)総会で、中小の産油国が反対するなか、サウジが事実上値下げを意味する「生産量維持」の方針を押し切ったことは、これをさらに加速させました。サウジのこの判断は自らにとっても減収を意味しますが、やはり石油・天然ガスの輸出に収入を依存するIS、ロシア、イランなどにとっても痛手となり、それは引いては米国の安全保障上の利益につながります。この観点からすると、サウジの行動は米国の利益に適うものでした。

しかし、他方で原油価格の下落は、米国で本格化していたシェールオイル生産に、コスト割れの危機をもたらすものでもありました。つまり、サウジによる原油価格の引き下げは、安全保障上は米国をアシストするものでしたが、シェール開発にブレーキをかけることでエネルギー面における米国の中東依存を維持させ、米国の独走を許さないものだったといえます。

ところが、これに対して米国はシェールオイルの輸出で応えたのです。市場に供給される原油の量が増えることで、原油価格はさらに押し下げられます。この状況は米国にとっても、シェール輸出から短期的に利益を期待できるものではありませんが、他方で石油産業以外にこれといった産業のないサウジにとっては、さらに痛手となり得ます。つまり、米国はあえて攻勢に出ることで、将来的に原油市場のシェアを確保する足場を作っただけでなく、自らの首に鈴をつけようとしていたサウジの手に噛みついたといえます。

シーア派指導者の処刑が米国にもつ意味
そんななか、冒頭で触れたように、サウジ政府は反政府の抗議活動を行った罪で逮捕されていた国内のシーア派指導者ニムル・ニムルの処刑を発表しました。

今回、処刑されたのはニムル・ニムルだけでなく、合計で47名に及び、その大半はスンニ派のアルカイダ系過激派組織メンバーだったとみられています。

とはいえ、シーア派指導者の処遇次第で、宗派対立を過熱させる恐れがあることは、以前から懸念されていたことです。国連なども自制を働きかけていたなかで、あえて処刑が行われたことには、少なくともサウジ政府、あるいはサウジ国王の確たる意思を見出せます。

つまり、今回のシーア派指導者の処刑は、単純な法的手続きの結果や、国内の反シーア派、反イラン感情への配慮という側面だけではなく、意識的にイランとの関係を悪化させたものとみることができます。それは、両国の関係を悪化させることで、イランとサウジのいずれにつくかを米国に迫る効果があります。そして、それは当然、ロシアを含むIS包囲網の形成などに関する判断を迫られている米国に、「サウジ国王の機嫌を損ねることのないように」というメッセージになってくるのです。

ターンは米国に
日本のメディアでは、サウジアラビアは「穏健派」と呼ばれることがあります。それはイランと異なり、米国と正面から対立するシーンが少ないことによります。実際、繰り返しになりますが、サウジは安全保障と経済の両面で米国と足並みを揃えることも珍しくありません。

しかし、自らの目標や利益のためには、いかに友好国であろうとも、相手に主導権を握られるのを避けようとすることは、国際政治の常です。サウジと米国の場合、サウジによる原油価格引き下げ、米国による安売り競争、サウジのシーア派指導者の処刑ときて、また次は米国のターンということになります。次の米国の一手が何であれ、これまでの展開に鑑みれば、少なくとも両国間だけにとどまらない影響をもたらすことだけは確かといえるでしょう。

六辻彰二
国際政治学者
博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、米中関係から食糧問題、宗教対立に至るまで、分野にとらわれず、国際情勢を幅広く、深く、分かりやすく解説します。


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