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国際経済学

897とはずがたり:2016/03/02(水) 11:19:47

もちろん、為替市場には行き過ぎが付き物であり、行き過ぎに対しては協調で行動を取る用意があることを示しておく必要はあるだろう。中国は、こうした日米欧からの一定のサポートを得た上で、対ドルでの人民元の大幅切り下げを回避し、資本規制の強化も辞さない覚悟を示すことが不可欠である。改革とは逆行するが、大幅な人民元の切り下げを回避しつつ、通貨高の痛みを和らげるため、緩やかな切り下げを可能にする資本規制が必要となる。

一方、財政政策については、あくまで信認に足る長期的な財政再建の道筋を立てた上で、当面の景気減速を和らげるため、財政に比較的余裕のある国から、ある程度の景気刺激策を講じることも必要となるだろう。単なる一時しのぎで追加財政を発動すると、各国の既得権益層と結びつき、国際金融市場の混乱を大義名分に、大盤振る舞いの財政が繰り返されるだけに終わる。

17年4月に予定されている日本の消費増税については、予定通り実施し、景気に大きな落ち込みが予想される場合には、それを相殺すべく追加財政を検討すべきである。消費増税の先送りで大幅な日本国債の格下げとなれば、国債金利が上昇しなくても民間部門の資金調達に悪影響が及ぶ。

リーマンショック後、新興国バブル、資源バブルを作ることで世界経済は回復してきたが、今やバブルは全面崩壊した。国際協調は、要するに、バブル処理の国際的な負担の分かち合いであり、政治的な国際合意は当然にして容易ではない。しかし、世界経済にはすでに大きな構造的な過剰問題と為替レートのミスアライメント(均衡為替相場からの著しいかい離)が発生しており、本連載でかねて述べている通り、これらは中国など新興国や資源国の政策の誤りだけによるものではない。アグレッシブな金融緩和を行い新興国バブルや資源バブルの種をまいた米国も責任を取る必要がある。

また、日銀やECBの金融緩和の成功の証とされていた日欧の株高も、実はファンダメンタルズが悪化していたにもかかわらず、ドルに対し固定的な為替レート制を維持していた中国の犠牲の上で成り立っていた部分が少なくない。各国の政策当局者が協調して目指すべきは、世界経済をソフトランディングに向かわせた上で、いかにして中長期的に不均衡を縮小させるかである。

もちろん、日本が多少なりとも通貨高を甘受する姿勢を示すことは、これまでのアベノミクスからの大きな方針転換であり、短期的には日本株にも一段の下押し圧力がかかるかもしれない。しかし、国際金融市場が安定に向かえば、長い目で見て、日本が得るものは小さくない。一方、このまま日銀がマイナス金利政策を追求していけば、アベノミクスは、近隣窮乏化政策の典型として、そして世界経済を泥沼の通貨安競争へ突き進ませたとして、世界経済史に記録されることにもなりかねない。安倍首相の君子豹変に期待したい。

<各国が行動様式を変えなければ1930年代の繰り返しに>

もっとも、仮に上述した国際協調政策が採用され、世界経済がソフトランディングするとしても、それで全ての問題が解決されるわけではない。

国内均衡と矛盾する政策が採用されることで、とりわけ米中では、新たな不均衡が生じるリスクがある。まず、世界的にディスインフレ傾向にあることを前提にすると、米国では利上げ中断が生み出す過剰流動性が株式市場や住宅市場に流れ込み、新たなバブルが醸成される可能性がある。米国の株高や住宅価格の上昇に連れ高する形で、金融緩和環境が続く日欧でも、そうした動きが観測される可能性がある。

中国については、追加財政で景気がある程度支えられるとしても、それによって資源配分が歪み、潜在成長率の低迷が続く恐れがある。また、人民元の大幅切り下げを回避するための資本規制それ自身も、当然にして市場規律を損ない、資源配分に悪影響をもたらす。

マクロ経済のボラティリティーを抑えるべく、ソフトランディングを志向することは政策的には妥当だが、それは、あくまで副作用を伴う「時間を買う政策」に過ぎない。ソフトランディングを好感し、先進各国で株高が続けば、政策当局はそれに慢心して必要な改革が止まり、結局さらに大きな問題を抱え込むのがこれまでの経験だったことを肝に銘じておく必要がある。

国際協調政策が、結果的に、超低金利と拡張財政の長期化・固定化に終われば、収益性の低い分野に経済資源が向かうだけで、世界経済の潜在成長率のさらなる低下は免れない。それゆえ、「伊勢志摩合意(安倍合意)」では、長期的な目標として各国が潜在成長率引き上げのために構造改革を推し進めることを約束することが重要だ。


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