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Tohazugatali Economic Review

1706とはずがたり:2016/08/26(金) 18:15:54

「再検討制度」に縛られて
「死に物狂いでやってくれ」
「このままでは再点検グループになってしまう。売却になる」
「事業を死守したいなら、最低限100億円やること」

 2009年1月23日、東芝の西田厚聰社長(当時)は四半期報告会で、営業赤字の見通しを持ってきた現場に「チャレンジ」を求めた。不正会計を調べた第三者委員会の報告書にはこう記されている。

 「再点検グループ」とは東芝の社内ルールで、一定期間、一定規模の赤字が続いた場合、売却や撤退を検討する事業群を指す。「100億円やる」とは「営業損益を100億円改善させる」ことを意味している。

 リーマン・ショックで世界市場は凍り付き、まともにパソコンが売れる環境ではない。しかも年度が終わる3月末まで残された時間はわずか2カ月。普通のやり方では到底届かない目標であることは、専務時代にパソコン事業のトップを務めた西田氏自身が誰よりもよくわかっていたはずだ。にもかかわらず、なぜ現場を粉飾にはしらせるような無茶を要求したのか。

 鍵は「制度」にある。東芝は米国がSOX法を導入してから2年後の2003年、米国スタイルの委員会等設置会社になった。日本でソニーと並ぶ先駆けだった。委員会等設置会社とは、外部の人材を入れた「指名委員会」「報酬委員会」「監査委員会」を置き、客観的に経営をモニタリングする会社である。導入を決めたのは当時の会長、西室泰三氏だった。

 西室氏は、当時、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の最高経営責任者(CEO)だったジャック・ウェルチ氏の信奉者だった。ウェルチ氏は徹底的な合理主義者で知られ、「業界で1位、2位以外の事業は売却する」という苛烈なリストラを実践した。

 人事では「2・7・1制度」を導入。上位2割を幹部候補として徹底的に教育し、ボトムの1割を解雇した。米通信機器大手のモトローラが考案した「シックス・シグマ」という品質管理手法をGEで発展させたのもウェルチ氏である。

 社長、会長時代の西室氏の経営は「ウェルチ氏の模倣」であったとされる。さすがに「2・7・1制度」の採用は見送られたが、不採算事業を切るために「再検討制度」が導入され、シックス・シグマも取り入れた。

 西室氏の後任の社長たちは、皮肉なことに、この「制度」に縛られる。業績不振が続けば「指名委員会」に解任されるかもしれない。業績を立て直すには「再検討制度」で不採算事業を切らなければならない。

 2009年1月の四半期報告会に戻ろう。リーマン・ショックで業績はどん底で、西田氏には「指名委員会」による解任のプレッシャーがかかっていた。再検討制度に従えば、パソコン事業を売却しなくてはならない。

 だが西田氏自身も売却したくはない。西田氏が社長になれたのは専務時代に赤字のパソコン事業を短期間のうちに黒字に立て直したからだ。この采配は社内で「西田マジック」と呼ばれ、西田氏の求心力の源になっている。思い入れのある事業なのだ。

 指名委員会と再検討制度の板挟みにあった西田氏の口から出た言葉が「100億円やれ」という言葉だった。現場はこれに従い、粉飾に手を染めた。

 ではGEの制度・組織を真似たことが東芝を粉飾決算に走らせたのだろうか。そうではない。その背後にある「思想」を理解しないまま、形だけ真似て「デコレーション」したことが敗因なのだ。

 リストラを厭わないウェルチは「彼が歩いた後は草一本残らない」という意味合いで「ニュートロン(中性子)・ジャック」と呼ばれた。ボトム1割の社員を解雇することについて、「冷たすぎないか」と問われたウェルチはこう反論している。

 「上司が『彼にはもうGEの中で活躍の場はない』と知っている人に向かって『君も頑張れ』と言うのが優しさだろうか。私は、できるだけ早い段階で現実を伝え、彼が活躍できる別の場所を探すことを応援するのが優しさだと思う。彼にはGEの外にきっと活躍できる場所がある。なぜならGEはそれだけの教育を彼に施してきたからだ」

 事業の売却も同じ思想である。ウェルチは勝てる事業に資本と人材を注ぎ込む。それ以外の事業には十分なお金と人が行き渡らない。だが世の中にはGEが「不要」と考える事業を、「主軸」に据えている企業もある。GEの中で日陰に甘んじているよりも、他社で主役になった方が従業員も幸せだし、社会全体の効率も良くなる。これがウェルチの思想である。


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