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石油・LNGなど=エネルギー総合スレ=

2074とはずがたり:2016/03/19(土) 19:41:35
>>2072-2074
 田中は当然のごとくひびき基地建設に向け、大号令を発した。長年温めてきた構想だけに妥協は許さない。各部署を総動員して事業計画を徹底的につめさせた。

 22年2月18日、取締役会で、事業母体として西部ガスが90%、九州電力が10%を出資して「ひびきエル・エヌ・ジー」を設立することを正式決定した。着工は同年11月だった。

 「ひびき基地さえあれば企業の大口契約は増えると豪語したけど、実を言えば絶対の自信があったわけではないんだ。まあ、すべては結果オーライだ…」

 今になって田中はこう打ち明けるが、ひびき基地への執念が「運」をも引き寄せた。

 社長就任から半年後の20(2008)年9月15日、米投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻し、その余波は瞬く間に世界中に広がった。リーマン・ショックだった。日本でも株価が暴落し、中小企業の倒産が相次いだ。

 西部ガスの業績も悪化した。案の定、社内外で「こんな時期に700億円もの事業を進めて大丈夫なのか」を危ぶむ声が上がったが、田中は意に介さず、こう言い放った。

 「リーマンショックで民間投資が停滞しているんだから逆に建設費を大幅に圧縮できるじゃないか…」

 読みは当たった。ひびき基地建設の落札価格は予想を100億円近く下回った。

 23年3月には東日本大震災が発生し、福島第1原発事故が起きた。菅直人首相(当時)のでたらめな政権運営もあり、全国の原発は次々に停止し、電力各社は窮地に陥った。

 電力会社には気の毒だが、原発停止により、LNGの需要は急増した。電力需給に不安が広がる中、LNGを燃料に発電し、排熱を冷暖房などに利用する「ガスコージェネレーションシステム」の導入を検討する企業が増え、家庭用燃料電池「エネファーム」の販売台数も伸び始めた。
               × × ×
 25年4月、田中は会長に退き、社長の座を酒見俊夫(61)に譲ったが、攻めの経営はなお続く。

 今年2月、福岡都市圏とひびき基地を結ぶパイプライン「九州北部幹線」(延長60キロ)の建設が始まった。直径50センチの大型鋼管を使用し、ガス供給量は年11億立方メートルと既存の「福北幹線」(延長75キロ)の2倍もある。福岡、北九州両市を結ぶ大動脈が2本になれば、災害時のバックアップ機能も大幅に強化される。

 翌3月には、ひびき基地の隣接地にLNG火力発電所(最終出力160万キロワット)の建設を決めた。32年度中の稼働を目指す。

 設備投資額は、ひびき基地700億円、九州北部幹線220億円。火力発電所は大阪ガスを含め複数社と提携するが、投資総額は2千億円に上る見通しだ。

 西部ガスの規模からすれば無謀といえるほどの巨額投資だが、田中、酒見は、電気・ガスの地域独占の事業形態が崩れゆく中、「総合エネルギー事業者」に生まれ変わるには欠かせない投資だと考えている。

 構想から10年余り。ひびき基地の運用開始は11月に迫った。それでも田中はなお新規の大口顧客獲得に向け、走り回っている。

 「おれがトップセールスを続けるのは『稼ぐ企業』に変わるために社員に意識を変えてほしいからなんだ。もちろんひびき基地の言い出しっぺとして責任を取る意味もあるけどね…」(敬称略)


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