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石油・LNGなど=エネルギー総合スレ=

1482とはずがたり:2013/06/01(土) 17:22:12
>>1481-1482
<結局は原油価格次第か>

次に、日本の貿易収支に対する影響はどうだろうか。周知の通り、11年3月の東日本大震災後に原発が一時すべて停止したことなどを受けて、火力発電に使うLNGの輸入は急増した。今後も原発が次々と再稼動するような状況が見込めない中で、米国からの安価な天然ガス輸入が増加した場合、日本の貿易収支改善にどの程度つながるのだろうか。

すでに報じられているが、米エネルギー省は17日、中部電力(9502.T: 株価, ニュース, レポート)と大阪ガス(9532.T: 株価, ニュース, レポート)と契約しているフリーポート社(テキサス州)に1日当たり最大14億立方フィートのLNGを20年間にわたり輸出することを認めた。米国でLNGの対日輸出が認可されたのは初めてのことだ。

輸出開始の目途は17年と4年も先のことだが、今後もコーブポイント(住友商事、東京ガスが参画)、キャメロン(三菱商事、三井物産などが参画)のプロジェクトが認可されれば、合計で年間1470万トンと、日本のLNG輸入量の約2割を米国からの安価な天然ガスに頼ることができるようになる。また、この結果、他国から輸入するLNGの価格も現在の原油価格連動から米国産天然ガス価格連動への切り替えが可能となるかもしれない。

3月時点で日本のLNG輸入価格は16.5ドル/100万Btuだが、米国の天然ガス価格は3.8ドル/100万Btu(3月平均)程度である。これに液化、輸送にかかるコスト約6ドル程度を加えても、10ドル/100万Btu前後と、現在の価格に比べてかなり割安に輸入できる。

しかし、日本政策投資銀行の試算によると、米国からの輸入分だけでなく、20年までに新規に締結する契約の全量を米国ガス価格連動で調達できたとしても、LNG調達価格の低減効果は現状比15.2%程度であるようだ。昨年の輸入額を基準にすればLNG輸入額は9100億円程度減少するが、これだけでは日本の貿易収支が劇的に改善するような効果は期待できそうにない。

その理由をもう少し詳しく見よう。日本の貿易収支(通関ベース)は11年に赤字に転じ、12年は過去最大の赤字(6.9兆円)を記録した。2年間の貿易収支の悪化幅は13.6兆円にも上る。そのうち輸出金額の減少は3.7兆円、輸入金額の増加は9.9兆円だ。つまり、貿易収支の急激な悪化は4分の1が輸出減、4分の3は輸入増で説明できる。

輸入金額増分9.9兆円のうち6.7兆円は鉱物性燃料の増加だ。その中で原油・粗油の輸入額は2.8兆円増加しているが、輸入量はむしろ減少しており、価格上昇が輸入額増加の主因であることがわかる。一方、LNGの輸入額は2.5兆円(72.8%)増加しているが、輸入量は24.7%しか増加していない。LNGの価格上昇がなかったとすると、原発停止に伴うLNGの輸入増加額は9000億円程度だった計算となる(2010年のLNG輸入額3.5兆円×数量の増加率24.7%)。つまり、日本の貿易収支悪化分13.6兆円のうち原発停止を受けたLNG輸入増加(量の増加のみ)の影響は僅か9000億円(収支悪化の6%程度)でしかないということである。

LNG輸入額の増加分2.5兆円のうち、9000億円が数量の増加分、1.6兆円が価格の上昇分ということになる。日本が輸入するLNGの価格は原油価格に連動していることから、実質的には原油価格の上昇がLNG輸入額を1.6兆円押し上げたと考えられる。つまり、鉱物性燃料の輸入増加額6.7兆円のうち、少なくとも4.4兆円(原油の輸入額増加分2.8兆円+LNG輸入額増加分のうち価格要因1.6兆円)は原油価格の上昇によるものなのである。

まとめると、シェールガス革命だけでは、日米の経常収支が劇的に改善することは望めそうにない。むしろ、過去2年間と同様、今後もしばらく原油価格の動向が貿易収支に対してより大きな影響を与えると言えそうである。


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