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PC関連スレ

2052とはずがたり:2017/02/06(月) 19:34:45

半導体市場が急速に成長するにしたがって、マーケティングの在り方もどんどん発達していった。それまでのシリコンバレー企業のやり方―経営者の直感で、新しい分野でのポジションの確立を狙って差別化された製品をとにかく早く出して、他社を出し抜く―というやり方はだんだん通用しなくなっていった。初期の半導体ビジネスではマーケティングは"本当の技術が解からない人たちの胡散臭い仕事"と言うイメージがつきまとっていたが、技術主導のやり方に限界が生じマーケティングの重要性が増していった。そこにいち早く目をつけた企業がインテルである。

インテルが1990年代に始めた"インテル・インサイド"マーケティング・キャンペーンは今でもMBAのクラスでは度々取り上げられるケース・スタディーで、近代ハイテク・マーケティングの草分けである。私はAMDで働いてはいたが、実はインテルと争うためにインテルのマーケティングから多くを学んでいたのだ。

インテルの"インテルインサイド"キャンペーンの起源については諸説あるが、最近私が読んだ"インテル"と言う本(書評を書いたのでご興味がある方はこちらをご参照)によると、このキャンペーンを主導したのは当時のマーケティングVPのデニス・カーターで、その草案を社内で検討した際にほとんどの幹部が反対したが最終的には当時CEOのアンディー・グローブが鶴の一声で決済したのだという。

カーターはインテルインサイドの構想にたどり着く前に"286レッドX キャンペーン"、というのを成功させていた(このキャンペーンについては私の連載の386の章>>2041で詳しく述べている)。要するに、AMDが286の改良阪でインテルの市場シェアを取り始めた時に、市場をインテルの新製品386に出来るだけ早く移行させようと286に赤いバッテンをつけて386に強引に移行させるという大胆なキャンペーンである。

パソコンの頭脳であるCPUの集積度が増して、メモリ以外のほとんどの半導体要素がCPUに取り込まれていく過程でインテルはもはやCPUの会社ではなく、PC(パソコン)そのものを売る会社に意識が変わっていった。CPUはPCに搭載されて初めてエンドユーザーに使われる。市場がどんどん成長するPCにとって一番重要な部品のCPUの市場を独占するのであれば、PCを造るメーカーはどこでもいいわけだ。要するにインテルの直接の顧客であるPCメーカーはインテルにとってはディストリビューター(流通)であるという考え方である。大変大胆で不遜な考え方であるが同時に的を射ている。

独占した市場で更に成長したければ、重要なのは“市場そのものを大きくする"、また“自分の売りたいマージンの高い製品を市場に受け入れさせる"ことであろう。これはマーケティング的に考えれば至極当然な結論である。もちろん、インテル=PCというイメージを定着させることによってAMDなどの競合を寄せ付けないというのが主目的であったことは言うまでもない。インテルは1990年代にこのキャンペーンに5億ドル以上(500億円以上)使ったという。インテルのテレビコマーシャルはPCのエンドユーザーに、普段は目にすることのないCPUという半導体製品がPCの頭脳としてPCのマザーボードの真ん中に鎮座していることを認知させることから始まった(CPUを見るためには、ねじを外してPCの箱を開ける必要がある)。

今でもはっきり覚えているが、このテレビコマーシャルを初めて見た時には何を訴求したいのか全く分からなかった。いきなり観客の視点がパソコンのフロッピーディスク(こんな言葉も今は死語である)の入り口からPCの中に入りCPUの上まで来て、"パソコンの頭脳インテルのCPU"と言って終わる30秒のクリップを見た時に"なんじゃこりゃ?"、としか反応できなかったのを覚えている。当時の私にとってはあまりにも斬新な考え方だったので、インテルの意図が全く分からなかった。インテルはこのキャンペーンで自らがパソコン市場のサプライチェーンの頂点に立つ独占企業としてのポジションをはっきり市場に示したのである。この含意について私がその全貌を知るのにはしばらく時間がかかったが、その後インテルの市場独占戦略は独禁法に絡むAMD対インテルの法廷闘争に発展し、その収束まで見届けた今の私にはよく理解できる。

驚くべき効果

最初に私が当惑したのは、インテルインサイド・キャンペーンの費用対効果である。

当時パソコンの宣伝は大変に多かったが、その中で私が強烈に覚えているのはアップルのMACの“Think Different"キャンペーンだ。そのキャンペーンが盛んだった頃、ちょうど私は出張でサンフランシスコにいて町のいたるところでこの素晴らしいキャンペーンのポスターを見てため息が出るほど感銘したのを覚えている。アップルマーケティングのブレインであるシリコンバレー・マーケティングのレジェンド、レジス・マッケンナの発案によるその後の歴史に残る傑作キャンペーンである。このキャンペーンの広告の要素はたったの3つである。


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