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聖典引用 板

1992goro:2013/01/31(木) 11:16:55 ID:nCo1DokU
>>1991

三日の後には、何万個という瓦や石の破片は宮殿跡の上段と下段地との境目にある石垣のところに、実に美事に積み上げられてしまった。東北の田舎から遥々上京してきた沢山の青年男女が、皇居内の清掃を手伝つてくれるということは、既に両陛下のお耳にも達していたが、連日の作業が、
いよいよ、今日から始まるという十二月八日の朝、陛下から私に、今日から仕事が始まるなら、その前に一同に会いたい、との御希望があった。

私も、心ひそかに、それを期待していたので、大喜びで、早速使を出して、現場にいる六十人の人たちに、お昼前に、天皇陛下が、作業現場においではなるから、そのつもりでいてもらいたい、ということを通知しておいた。陛下が作業現場におでましになるとき、お供をしたのは僅か数人であつたが、私は御座所から現場まで数百歩の道すがら、焼土の上に歩を進められる陛下のお心のうちを、あれこれと、お後にお供しながら考えた。

ザックザックと砂をふんで一歩また一歩、現場に近ずかれるお靴の音は、まさに日本歴史大転換の歯車のきしる音としか思えない。国民と共に語り、共に苦しみ、共に楽しまんとの御決意は、すでに御即位のときから明瞭に、われわれお側にお仕えしている者には、拝察できたことだったにも拘わらず、いろいろな事情のために、その実現はできなかったが、奇しくも国破れた今日、陛下は、その機会をつかまれたのだ。

宮殿の焼失などは、いま露ほども惜しいとは思っておいでにならないに相違ない。ただ、夜となく昼となく、常にお胸のうちを去らないものは、亜細亜大陸の各地、また太平洋の島々に、とり残こされた末復員の将兵その他の同胞の安否や、国民各家庭のさまざまな悲惨辛苦のことだ。いま数分後には、はるばる仙台の奥から手伝いにきてくれた青年たちにお会いになれる。こんなことが皇居内で行われることは未だ嘗て前例のないことだが、少しはお気が晴れることだろう、など。

陛下のお姿を遠くから拝した六十人の人たちは仕事をやめて、あちこちから集ってきて、陛下をお迎えし、ここに前例のない御対談が始まったのである。代表者(慶応義塾出身の鈴木徳一君、惜しくも昨年末仙台で病投)が御前に出て御挨拶を申し上げたのに対し、陛下は、遠いところから来てくれて、まことにありがとう。郷里の農作のぐあいは、どんなか、地下足袋は満足に手に入るか、肥料の配給はどうか、何が一番不自由か、など、御質間は次から次へと、なかなか尽きない。


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