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聖典引用 板
1964
:
goro
:2013/01/23(水) 10:35:33 ID:nCo1DokU
>>1963
の続き
このことを、私は食事中に思い出し、ここも波の静かな鹿児島湾内のことであるから、いつ、どこから、船が来ないとも限らない。今は陛下もお食事中であろうし、我々も皆食堂にいる。後甲板には、いま、誰もおらぬだろう。もし船でも来たら、相すまぬことになる、と考え、皆より早く食事をおえ、大急ぎで後甲板に駆け上がった。艦内は非常によく照明されていて明るいが、後甲板の上は、まことに暗く、電灯の下ならともかく、少しはなれたら、人の顔も、よく見分けのつかぬ有様であった。
ところが、誰もおらぬとばかり思って飛びだした私の目にうつったのが、右舷の手すりのところに、西を向いて立っている、ひとりの人の後ろ姿であった。望遠鏡から手をはなし、挙手敬礼の後ろ姿。
ハテ、今ごろ、誰が、と思って、近づいてみると、こは、いかに、陛下ではないか。さては、奉迎船が下にきているな、と私はすぐ右舷に馳せよって下を見たが、船らしいものは見えない。ハテ、なにか望遠鏡でごらんになったのかな、と思って私も近くの望遠鏡に目をあててみたが、明るいところから、急に暗いところにくると、目が慣れていないので、なかなか見えない。ジーッとがまんして、のぞいていると、そのうちに、だんだんと目がなれてきて、薩摩半島の山々の輪郭が、ぼんやりながら見えてきた。
時刻から推測して、指宿の沖合あたりかな、と思った。そのうちに、こんどは、海の色と陸の色との区別が付くようになり、水陸の境目つまり海岸線一帯に、延々果てしなくつづく赤い紐のようなものが見える。ハテ、これは何だろうか、と考えていたら、次に見えてきたのは、この赤い紐の上、小高いところに、幾百メートルかの間隔をおいて点々ともえさかる篝火。これで私は万事を了解した。
当夜は月もなく、星も稀な、曇りがちの空模様で陸からは軍艦の姿は見えないが、時刻から考えて、今ごろは陛下のお船が沖を通過になるときだ。と語り合い、薩摩半島の村々に住む人々、老いも若きも、ちょうちんやたいまつを持って海岸に立ちならび、また若者たちは山々に登って篝火をたき、半島に住む村びと、こぞって陛下をお見送りしているのである。
陛下は、いま、望遠鏡で、これを発見遊ばされ、うす暗い甲板の上から、ただ、おひとりで沿岸一帯の奉送の灯火に対し、はるかに、御挨拶をなさっておいでになったのである。
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