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聖典引用 板

1959goro:2013/01/19(土) 19:59:36 ID:nCo1DokU

>>1958の続き

ぜひ天幕の中に、と重ねて進言されたのであるが、陛下は仲々お聞き入れにならず、司令官でも、時と場合によっては、第一線に立つことがある。今日はその積りであるから、天幕はとり除くように、とのお言葉に、さすがの大臣もお返しする言葉がなく、然らば防水マントはお着用になるように、とお願いし、それは着ようとのお言葉を得て、侍従長室へ帰ってこられ、私に玉座の天幕をとりはずすように、と指示された。

午後一時頃、私は天幕をとりはずすため、係りの者をつれて現場に来た。当日、分列式陪観のために招待を受けた向きは、外国大公使を始め、内閣総理大臣以下各大臣、陸海軍元帥以下将星、貴衆両院議長議員その他沢山の人達であったが、もはやその六分通り陪観席を埋めて、雨傘や、カーキ或は黒のマントが入り混じっている。

この人々の面前で、私たちが玉座の天幕を撤去しはじめたのを見て、みな驚いたらしく、式が中止になるのではないか、場所が変更になるのではないか、など心配して、数々の人々が、わざわざ陪観席から私の立っているところまで来て、何故にこの大雨の中で、玉座の天幕をはずすのか、という質問だ。私は、その方々には、一々、陛下の思召によって撤去しているのです。と答えておったら、そのうちに今村中佐の部下の若い将校が陸軍の本部から走ってきて、私に同じ質問をするから私も同じ答えをした。その若い将校は、朝からの活動で、ずぶぬれの有様だったが、非常な感激の様子で、ああ、そうでしたか、と陸軍の本部に馳せ帰ったが、直ちに伝騎数組を派遣して、この時刻に、すでに皇居の周辺に集結している約八万の青年たちに、陛下の思召により玉座の天幕撤去の旨を伝達せしめた。この伝令の声が、青年たちの胸に、いかように響いたかは、いうまでもない。

当日、朝早くから、武装した約四万の青年の集団は、皇居の大手門外から九段下にかけて、あのコンクリートの道路上に立ったまま、大雨に打たれ、寒風にさらされ、式の開始を長い間、待っていたのだ。体は濡れにぬれて冷えきっている。眠気は出る。腹はへる。恐らく不平だらだらののものも沢山いたであろう。そこに今の伝令の声、思召により天幕の撤去、裏を返せば、君たちがぬれるなら、私も濡れようという陛下のお声だ。

感激の嵐、急に熱い火の玉が、からだの中を走り廻り始めたのであろう。皆いちどきに、雨の中で外套を脱いでしまった。脱ぐには脱いだが、これを巻いてまた背嚢につける場所の余裕が無い。分列行進のときに、紅張した顔で、外套を左わきに抱え、右肩に銃を担った異様な姿で、大地もくだけよとばかり、靴音高く、ザック、ザックと感激に満ちた眼光で、陛下を見上げながら、玉座の前を通過していた青年集団の張り切った姿を、私は今でも忘れない。


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