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聖典引用 板
1208
:
うのはな
:2012/08/30(木) 16:55:38 ID:TYG5qr22
>>1207
つづき
こんな楽園にも、なやみがないわけではない。おもに人間関係の問題である。
ある日、永田夫人(仮名・三十五歳位)が私を訪ねてきた。なやみというのはご主人の
ことであった。このご主人は、会社から帰ってくると、カバンを玄関に置くなり、すぐ温室に入ってしまう。
温室では二〇〇鉢以上の蘭を栽培していた。奥さんはご主人が蘭の手入れを終って夕食をたべに来るのを
いつも待っているが、時には二時間も三時間も温室から出てこない。
あたためた料理が冷たくなってしまう。なんとか、夕食を済ましてから温室に入ってほしいのだが、奥さんが何度たのんでも言うこと
を聴いてくれない。「まるで私より蘭の花の方を愛しているのです。私はしゃくにさわって、蘭の花を見るのもいやです。植木鉢をみんな
壊してしまいたいくらいです」
永田夫人は、自分は正しく、悪いのは主人だ、といった調子でご主人を非難するのだった。
たしかに、奥さんとご主人をくらべれば、悪いのはご主人の方だろう。しかし、家庭のトラブルは善・悪だけでは解決しない。
やはり夫婦間の“愛”が解決の鍵になる。私は永田夫人といっしょに祈った。
それは“和解の神想観”である。
ご主人が奥さんに向かってニコニコ笑っている姿を心に描いて、
「私はあなたを赦しました。あなたも私を赦しました..........。あなたと私とは神において一体
でございます」ではじまる、よく知られたあの祈りを行ったのであった。
神想観が終って、奥さんが言った。
「はじめのうちは主人がニコニコ笑っている顔なんか思い浮かばなかったんですが、先生が
言ったように、主人は、別に浮気しているわけでもないし、ただ蘭の花が好きなだけだ。やっぱり
考えてみると、主人は心やさしいひとなんだ........こんなように思えてきました。そして、ほんとに主人が
私にニコニコ笑いかけている姿が見えるようでした」
ハワイの蘭の花はたいへん美しい。オーキッドといって、花の女王ともいうべき高価なもので、たくさんの
人が栽培していた。私は奥さんに言った。「ご主人もそんな美しい花をつくっておられるのだから、心やさしい人ですよ。
そんな人と結婚しているあなたは、幸福だと思わねばなりません」
この私が言った言葉が、彼女の心に深く残ったようだった。数日たって、永田夫人がふたたび教化部を訪ねてきた。
「先生!おかげ様で解決しました........」彼女の顔はよろこびいっぱいだった。
彼女の言ったことを要約すると次のようだった。
祈りが終って家に帰ったら、温室に入ってみたくなった。これまでは“うらみ重なるオーキッド!」というわけで、温室から
遠ざかっていた。温室に入ってみると、よごれている。あっちにもこっちにもタバコの吸い殻やゴミが捨ててあって、灰皿にも
吸い殻がいっぱいだった。ごく自然に彼女は温室を掃除した。一時間以上かかって、見違えるようにきれいになった。
「よかったわ。これで主人もきれいなところで花のお世話ができるわ」
ところが、その日の夕方。ご主人はいつものように家に帰ると、すぐ温室に入った。
しかし、三十分もすると温室からでてきて、「おなかすいたよ。食事にして。キミが温室を掃除してくれたのかい。ありがとう。
これまで迷惑をかけてわるかったね。これからは、さきに食事をしてから花の世話をするよ......」
ほんとうに久しぶりに明るいご主人の顔であった。
それからは、お二人は新婚当時のように仲よくなった、というのである。
美しい蘭の花をめぐるハワイらしいエピソードだと思った。やはり、相手の姿は、こちらの“心の影”であった。
そしてここでも、愛はすべてを解決してくれるものだった。
『光の国から』 渋谷晴雄 先生著 P67〜
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