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聖典引用 板

1184うのはな:2012/08/27(月) 08:39:56 ID:20AcZStc
>>1179つづき

 約束の八時半にМ子はやってきた。夫の仕事の邪魔にならないようにと、奥の八畳へ通した。
近況報告をいろいろ聞きながら、私は座蒲団に坐って彼女に背を向けた。
 М子は私の頭から、ぐんぐん指で強く急所急所を圧しながら、次第に体を下へと圧し進んで行った。
私は痛かったが、しかし快かった。彼女は一風変わったところのある女性で、幼い兄妹と共に、両親に
早く死別したので、母親代りとなって働き、弟妹を養って来た。男勝りだが、男勝りにならざるを得ない境遇であった。
そのために婚期を逸してしまい、今三十を幾つか過ぎて独身である。

 彼女は御嶽山に二年くらい修行に行って、そこの寺の坊さんにマテナを習って帰郷し、目下郷里でマテナを職業としている。
彼女は声をひそめて私に話したことは、世にも珍しいことであった。
彼女は誰かに聞いた福井県敦賀の或る山に出かけ、そこの山に懸る滝に打たれて、谷口先生の長命を祈ろうと決心した。
山を登りつつあるとき、彼女の嫌いな蛇が一匹現れて、彼女を振り返って、じっと彼女の顔を見つめたのでゾッとした。
恐かったが、敗けるものかと元気を出して登って行くと、蛇は彼女の道案内でもするかのごとく、ずっと彼女の行こうと思う方向へ先行した。
寒い冬であった。

「蛇は冬眠しているのじゃないの」「いいえ奥様、蛇は出ていました。それが不思議に思われました」
彼女の声は怯えたような響きをもった。何週間か滝に打たれていると、或る日、滝の中にいる彼女の眼前に、パッと光が射したと思う瞬間、そこに
現れたのは蛇のような眼をした怪物の顔であった。大きな大きなと彼女は両手でバケツくらいの輪を作って、
「こんな大きさの顔でした。恐くて恐くて逃げ帰ろうと思ったが頑張って、翌日また滝に打たれていると、今度はまた鳥のような形の大きな顔が現れました。
私は気が狂ったのではないかと思いながら、敗けまいと敗けまいと頑張りました。
家に帰って来ますと、誰も私が気が狂っていると言う者もなく、常と同じでした。
奥様、ああいう変化の世界があるということを、私は初めて知りました」
と、彼女は繰り返して言った。その山に住む人の家に行ってその変化を見たことを話したら、その家の主人は、「そんな話を聞くことは私は嫌いだ。うちの家内は
そんなことをやっているが、、、」と不快な顔をされたので、そこを去って、その主人の妻である女の行者を訪ねると、「あんたにも見えたかね。あんた霊覚が出来たのだよ」
と言われた。生長の家の教えが多少とも心に入っているМ子は、「あんな怪異の世界は本物ではない」と否定した。

「奥様、それでよろしいでしょうか。私は気が狂ったのではないでしょうね」
「貴女が蛇に見つめられて敗けたり、大きな顔に恐れて敗けたりしたら、貴女は気が狂ったかも知れないけれど、貴女はしっかりしていて、それらの無気味な
ものに敗けなかったから良かった。また、女行者に『霊覚が出来た』とおだてられて、何か偉くなったように自惚れたら、或いはのぼせ上って気狂いのようになってしまったかも
知れないけれど、貴女はそれらの怪しい現象に惑わされることがなくて良かったね。そういう怪しい現象に執われないで、無視してしまったらいいのよ。そういうことに興味をもって惹かれて
行くと、良い運命は得られません、、、、」

 私はМ子と話していると、若い頃のことを追憶するのであった。

つづく


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