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【資料】神秘主義の系譜【探索】

28名無しさん:2013/07/20(土) 04:54:50
>>27

 新宗教の宗教思想の特徴は〈現世救済思想〉の語で要約できる。それまで有力だった仏教の救済観が現世離脱的,来世志向的であったのに対し,新宗教は現世の身近な生活の改善がそのまま究極の幸福に通じるものととらえる。どちらかというと死や死後の世界に関心が薄く,死後の世界に関心を払う場合でも,この世の幸福に影響してくる限りで来世を問題にするという傾向が強い。中心的な礼拝対象は〈親神〉であったり〈仏〉であったりするが,しばしば〈宇宙大生命〉とよばれる。典型的な教えでは,宇宙万物も人間も同じ宇宙大生命から派生した存在としてとらえ,他者や環境と調和した関係を結ぶことによって宇宙の生命力と合体していけると説かれる。調和した関係を取り結ぶ鍵は個々人の〈心〉にある。清らかで曇りのない心,愛情豊かで落ち着いた平静な心を保つことによって宇宙的生命の流露する幸福な生活を実現できるとする〈心なおし〉の教えも広く共有されている。これらが〈生命主義的救済観〉とよべるような教えを構成している。
 本来的な充実した生活はまず家族において実現するとされ,家族の和が尊ばれる。家族を守る存在として先祖が尊ばれる教団も多い。日本の国が特別な価値や使命をもつとするナショナリズムは広く認められる。ただし,天皇をある程度尊ぶとしても,崇拝する教団はむしろ少数派である。教祖やそれをつぐ教主らは生き神的な存在として崇拝されることが多い。教主を中心にカリスマ的な指導者が地域に根を張り,仲間的な小集団を抱え込むというような多重的な組織を作るものが多かった。

[1970年代以降の状況] 欧米や,欧米の文化的影響の強い地域では,1970年代以降,新宗教の顕著な拡大期に入った。クリシュナ意識国際協会,超越瞑想(TM),和尚ラジニーシ,統一教会(世界基督教統一神霊協会。〈原理運動〉参照),サイエントロジーなどの欧米での発展が注目された。日本新宗教の海外での発展が顕著になるのも,ちょうどこの時期である。一方,日本国内では既存の新宗教の発展にかげりがさすようになる。そして,その既存の新宗教の衰退を補うように,真光(世界真光文明教団,崇教真光),阿含宗,オウム真理教,幸福の科学,ワールドメイトなど,〈新新宗教〉とよばれるさらに新しい新宗教教団が発展してきている。さらに,既存の〈宗教〉そのものの抑圧性を超えて,個々人がそれぞれに自己の内面を探求し,それぞれの霊性を育て,自己変容をとげ,さらには人類全体の意識の進化をもたらすのだと考えるニュー・エイジ new age(欧米での呼称)とか精神世界(日本での呼称)とかよばれる潮流も世界同時的に成長してきている。日本では新宗教と精神世界はいちおう区別すべき現象と見なされているが,欧米ではニュー・エイジを新宗教の一部と見なす見方も有力である。いずれにしろ,宗教的なアイデンティティの選択肢の幅は地球上のどこでも,とりわけ先進国の大都市においては顕著に増大している。
 70年代以降は西洋近代の文化価値が揺らぎだした時期である。また,資本主義経済の拡大,通信・運輸技術の飛躍的向上に伴って,文化や情報の交流・移動が容易になった時期でもある。地球上の多くの地域で外国人や異文化との接触が飛躍的に増大してきた時期に,新宗教も増大し,宗教の多元的な併存状況が目立つようになってきた。しかし,そうした宗教的多元性の芽はすでに近代社会の中に存在し,アメリカ合衆国や日本などでは新宗教やセクトの叢生,競合というかたちで徐々に育てられていたと見ることができる。
                         島薗 進

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